ミノタウルスは出られません!
法空絶汰
序章 牛男が棲む迷宮
まだ人と神が互いに干渉していた頃、とある島のとある迷宮のとある一室。
「あー、うめー」
一人の少年がその迷宮に住んでいた。少年はキングサイズのベッドでダラダラしながらお菓子をのん気に食べており、ベッドの上には大量のお菓子のゴミが散乱している。
彼の名はアステリオス、この国の王ミノスの息子である。
彼は他の人間とは違いがあった。生まれつき牛のような角が生えていた。
まだ幼い頃は頭が洗いにくいという以外は別段困ることなどなかったが、歳を重ねるにつれ角はどんどん太くなっていき、歩くのが困難になっていった。アステリオスが生まれつき貧相な身体というのも理由の一つであるとは思うが。
もともとあまり動くことが好きではなかったアステリオスは、思春期に入る頃には完全な出不精になっていた。
王はアステリオスが外に出るよう色々試してみるものの、全てが逆効果。アステリオスは不貞腐れ、これまた見事な捻くれ少年になってしまった。
そんな彼に王は逆ギレし、彼を迷宮に閉じ込めてしまった。
しかし、これも逆効果。彼は王子という立場を利用しあらゆる物品を取り寄せた。
現在、彼は引きこもりライフを絶賛満喫中である。
ついたあだ名がミノタウルス。「ミノス野郎の牛息子」という意味である。
「さーて、昨日届いた本でも読むか」
アステリオスが床に積まれた本の山に手を伸ばしたその時である。
「ようやく、見つけたぞ! 怪物ミノタウルス!」
彼の部屋に声が響いた。無論、彼の声ではない。
誰だと思い、彼は声の方に目を向ける。
アステリオスと同じくらいの歳であろうか。声の主は年端もいかぬ少年、いや、少女であった。男の格好をしているがまごうことなき少女であった。
少女はアステリオスの視線に気付くと剣を突きつけ声高に名乗りを上げた。
「我が名はテセウス! 我が国の民の悲しみを思い知れ!」
これが二人のファーストコンタクトであった。
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