33話 攻撃作戦開始

『博多駅から西へ2.5km、天神駅付近まではトンネル内に逃げ遅れナシ。攻撃を許可する』

 首に備え付けてある無線機からエルの声が聞こえてくる。

「ラジャー」

 琴里は美鈴らと共に返事をすると、立体映像タッチパネルを展開し、T-gamの作動をチェックした――T-gamを東京からはるばるどうやって持ってきたのかというと、琴里たちが乗ってきたヘリとは別にもう一機の輸送ヘリで福岡上空まで運び、自分らと同じタイミングで投下したのだ。戦闘機は航続距離が長いと琴里が疲れてしまうので遠出するときはお留守番である。

 ホログラム画面上には衛星から逐一送られるこの一帯の地図が表示されていた。兵器が今どこにいるのか、動向が文字通り手に取るように分かる。エルから報告のあった2.5km圏内には地下鉄の通る大通りを中心に3体がいて、琴里達の目の前ではそのうちの一体が博多駅前のビル軍を破壊し続けていた。

「さーてと、じゃあ始めますか」

 琴里は首を左右にゴキゴキと鳴らすと、再びタッチパネルに手を置いた。

「自動装填装置作動、目標捕捉」

 琴里がパネルを操作すると背後のT-gamからウィーンと音が聞こえ、発射口に弾が装填された。

「――発射!」

 ピッ、という音とともにエンターキーを叩くと、爆音を上げながら弾が斜め上に撃ち出された。……と言っても目の前なので、撃ち出されてすぐに空中で弾け、金属のような物質で作られた網が兵器に覆い被さった。兵器はそこから抜け出そうともがいている。……確かに下手をすれば地下鉄のトンネルを崩落させてしまいそうだ。

「後は頼むよ、美鈴」

「うん、分かった!」

 美鈴は空中でピタリと留まって矢袋から矢を取り出し、キリキリと引っ張って狙いを定めた。そして、右手を離すと矢は回転しながら一直線に兵器に突き刺さり、さらに回転スピードを増した。この兵器はあと数分の命だろう。

「後はワタシに任せて!琴里たちは先に行ってヨ!」

「おっけ、任せた」

 琴里は既に狙いを少し離れた兵器に向けていた。T-gamの発射台が回転して方向を整える。捕らえるだけの網と言えど、構造上はミサイルなので多少遠くとも問題はない。

 ――琴里がそのまま二発目を撃とうとした時だった。狙っているのとは別のもう一体が路地を曲がって南進し始めたのだ。

「ハクト、一体南に行ったよ。その先に道を封鎖してる警官たちがいる」

『分かった。すぐ行く』

 衛星映像には一直線にその場へ向かうハクトの姿もバッチリ映っていた。琴里もちょっと息をついて新しいココアシガレットを口に加え、二発目のゴーサインを出した。

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