1-6:染戦1

「ミライ、起きて!」

マモリの声にミライが目をさますと、そこは見慣れた町の公園だった。

「ここは?いつのまに公園に?」

「いや、ここはキミの心の中、まあ、夢みたいなもんだと思ってくれ」

マモリも、ライチもそこにいた。


「さて、細かい話はあとにして、キミにはまずやってもらわないといけないことがある。魔法使いが自分の魔力を制御するために、自分自身の魔力と”染戦せんせん”をやってもらう。つまりアイツと魔法で戦うわけだ」

ライチが指差す場所には、もう一人のミライがいた。ただ、色合いが少し黒濃い。


「そんなこといきなり言われても」

ミライの言うとおり、あまりにも急な話だ。もともとリッカのことと魔法のことを知りたくてついてきたのに、いきなり気絶させられて戦えとはどういうことだ。

「大丈夫だ。キミの持っているカードを使うんだ」

ミライは手に持っているカードを見る。青いカードと橙色のカードだ。それぞれ何枚かずつある。これを、どう使えと?


「安心して。アタシ達がサポートするから」

「いや、安心してって言ったって……」

「相手は自分自身だ。動きをよく見れば真似できる!ほら来たぞ!」

黒濃いミライがカードを構えた!


◆染戦開染◆


「”飲み込め『水』!”」

黒濃いミライが青いカードを投げると、それは濁流となりミライたちを飲み込もうとする!


「”熱波『爆発』水波蒸発!”」

マモリが赤いビー玉を濁流に投げ込むと、それは蒸気となって対消滅!

「見たかい!それがキミの力の一つ、青魔法の『水』だ。水をイメージして言葉にするんだ!」


「水をイメージ……」

ミライは青いカードを手に取り、目を閉じて想像する。水……。

「よし!」

ミライが目を開き、呪文を唱える!

「流れろ『水』!」


ミライの持つカードが青く輝き、水が流れ出た!どぼどぼと……流れ出ただけだ!

「……え?」

ミライは呆然とした。

「あー……」

マモリも呆然とした。


「”降り注げ!硬い『水』!”」

黒濃いミライが次の呪文を唱えてカードを空高く投げる!硬い水、すなわち氷柱が三人に降り注ぐ!


「”吹き出し『留まれ』盾になれ!”」

ライチの筆から緑色の絵の具が吹き出し、三人の大きな傘になり、氷柱を防いだ!

「スマン!さっきのは俺のアドバイスが悪かった。いいか、キミの力は『水』だが、水にも色々な形がある。水ができることも、ただ流れるだけじゃない。魔法はイメージ力がそのまま力になるんだ!」


「水ができること……これだ!」

ミライは考える。そして、一つの答えを出した。

「”溶けて洗い流す『水』!”」

ミライの持つ青いカードから光が拡散し、地面に落ちた氷柱に飛んでいく。氷柱は溶けて水となり、黒濃いミライに向かって飛びかかり、その黒を洗い流す!


「うわごぼぼぼ……」

黒濃いミライが水に飲まれ、その色が洗い流されていく。黒が消え、魔力を支配下に置いたのだ。


◆染戦閉染◆


「そうだ、よくやったぞ。マモリちゃんのときより上手だな」

ライチが笑う。

「ちょっと!」

マモリがライチを睨む。ミライはというと、自分が魔法を使ったことがまだしっくり来ていないようだ。


「まあまあ、それよりあれを見るんだ」

ライチが指差す先には、洗い流された黒濃いミライが立っていた。その体は、青と橙にぼんやりと輝いている。

「あれが僕の魔力?なんか色が……」


「ああ、そうさ。あれがキミの魔力であり、キミが使える魔法の色だ。どうやら、橙魔法も使えるようだけど、使うためには言葉を知る必要があるね」

「魔法の言葉……」

「魔法は六つの色に分けられて、それぞれの色にいくつかの言葉がある。使える言葉は魔法使いによって違うから、その言葉を知らないといけないんだ」

「うーん……」


「まあ、最初は誰だってそうさ。俺だって、マモリちゃんだってそうだったんだ。さて、そろそろ戻ろうか。リッカのことについて、色々と話そう」

ライチがそういうと、ミライは現実で目を覚ました。

「それじゃあ、何から話そうか?」

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