第22話 おっさん2人
親父の名前で免許証を取得した奴がいる。そしてそいつは今も生きていて、親父の名前の運転免許証を有効活用している。それってつまり 「
一目瞭然
免許証って身分証明にもなるんだよな。そうそう、偽造免許証って刑事ドラマの犯罪小道具によく使われてるよな。すげぇポピュラーな手口じゃん。ま、幸か不幸か、そいつがやった犯罪は駐車違反程度だったわけだけど。
だいたいそいつは、なんだってそんなことをしてるわけ? 免許証なんて自分の名前で取ればいいじゃん。普通はそうだろ? なんか自分の名前じゃ不都合な理由でもあんのか? 自分の名前じゃ取れないとか?
そんな奴、いんのかよ?
でも明日
今日はもう遅いし。これ以上遅くなったら、
これまた訊けば、雪緒は今施設にいるらしい。母親が殺されて、しかも殺害現場が自宅となればそうなるのも仕方がない。しかも未成年だし。
普通なら父親の家に預けられるところなんだろうけど……あれ? そのへんをこの子はどう思ってるんだ? ってか、どこまで知ってるんだよ、おい。
だってこの子、親父の隠し子だよな? 本当は違うけれど、少なくとも雪緒はそう思っているらしい。しかも家まで知っていてあんな手紙を持ってきた。
なんかおかしいくないか?
とりあえずこの夜は雪緒を施設まで送っていって、俺も大人しく家に帰った。でもコンビニに行った目的を買い忘れ、手ぶらで帰ったら清隆にしばかれた。
最近、物忘れが酷くてさ……
翌朝、いつものように学校に行こうと思った俺は、ついつい家を出たところで辺りを見回してしまった。さすがに昨日の今日で雪緒の姿は見当たらない。とりあえず清隆とはもう会わないよう言い聞かせたし、家にも来ないよう言っておいたんだけど、やっぱりちょっと気になってさ。
別に雪緒のことを信じてないとかそういうことじゃないんだけど、でもやっぱり気になるじゃん。で、ついつい家の周りを探しちゃったってわけ。で、またおっさんとぶつかった。
昨日のおっさんだ。見掛けない顔だけど、実はご近所さんだったのか? 近所で引っ越しなんてなかったと思うから俺が知らなかっただけで、実はずっと前から住んでたとか。ずっとご近所さんだったとか?
ま、いっか
とりあえず謝っておく。それで無罪放免だと思ったのに、この日はおっさんの方から話しかけてきた。
「
親父の知り合い? 一瞬そう思ったんだけど、すぐに違うとわかった。なぜかと言えば妙なことを訊いてきたからだ。
「最近お父さんの姿を見ないんだけど、どうしたの?」
見なくて当然ですけど? 見えないんですから。見えたら怖いんですけど。見えてもそれ、幽霊ですから。いや、化けて出てきたとかそんなんじゃないと思うけど……そういや俺、墓から出てこいとか言っちゃったっけ……。
前言撤回!
ちょっと遅いけど、有効にしてくれると助かる。
「いや、ちゃんと帰ってきてるのかなって思ってさ」
盆と正月に? そうじゃないよな? そういうことを訊きたいんじゃないよな? だって 「たいしたことじゃない。それこそちょっと気になっただけ」 みたいな見え見えの嘘ついちゃってるもん、この親父。どこをどう見ても俺よりもアドリブが下手なんだよ、この親父。ここは俺も清隆を真似てちょっと蹴ってみたり……しないけどさ。あからさまに不審なおっさんは、適当なことを言いながらどこかへ行ってしまった。
あとで思ったんだけど、このおっさんが前に清隆が言っていた 「家の近くにいた変なおっさん」 だったのか? 清隆が見た時は帽子被ってサングラス掛けて、マスクまで付けて不審者ですと言わんばかりに顔隠してたって話だったけど。
今のおっさんは顔丸出し
やっぱ別人なのか? わからないけど、ちょっと気をつけた方がいいのかもしれない。今日は学校が終わったら雪緒と会う約束してるし、雪緒にも訊いてみた方がいいかな? やばそうだったら、やっぱり警察に相談した方がいいんだろうけど、どうするかな?
ん? 清隆? ああ、あいつなら大丈夫。下手に声なんて掛けようもんなら、問答無用で蹴り飛ばしやがるから。てか、その辺のおっさんごときじゃ、あいつのひと睨みで即退散だよ。だから……
たぶん大丈夫! ……つづく
【後書き】
変態刑事2人が出なくなったと思ったら、今度は不審なおっさん2人が登場!
あ~でもこれ、同じおっさんかもしれないな。だってさ、変なおっさんとか、1人で十分ですから。とりあえず俺は雪緒と会ってきます。あ、言っとくけどデートじゃないから! そんなんじゃないから!
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