第20話廃人

美羽と美生を亡くして


隼人は、コンビニを辞め、アルコールに安住した。


飲んでは吐いて体重も激減した。


血ヘドを吐いても酒を飲み続けた。


隼人を心配して仕事先の水谷優子や黒沢家の人間が訪ねて来ても会おうとしなかった。


毎日、写真の中にいる美羽と美生を見ては涙を流して酒を浴びるように飲むのだ。





そんなおりに黒沢が奇跡的に植物状態から覚醒した。


それを聞き隼人は黒沢に会いに行った。


「黒沢しゃん、どうしたら死んだ人間を生き返らせるんでしょうか?」


隼人は、酒の飲み過ぎで舌が回っていない。


「ある…。死んだ人間じゃない人間とぶつかり合ってみる事だ。」


まだ、万全ではない黒沢は隼人に跡目を継がせようと必死だった。





水谷優子は、隼人が病欠扱いの間に店長を任されていた。


優子は、毎日、隼人のマンションに行き手紙を送り届けていた。


アルバイト時代から優子は隼人の事が密かに好きだった。


そんな毎日を送っていると隼人が珍しく呼び鈴に反応して扉の奥から出て来た。



いきなり、背中から優子を隼人は抱きしめた。


「優子は死なない?ずっと側にいてくれる?」


「はい。」


その夜、二人は結ばれた。



隼人は、大きな水槽に浮かんでいた。


ここはどこだ?


天国?地獄?


まぁ、どっちでも良い。


美羽と美生はいるかな?


そこに黒沢が現れた。


お前は、殺人の天才だ!


俺が?


違う!俺は人殺しじゃない。


水槽の水が急に無くなる。


隼人は、空気が出来なくなって目をさました。



「隼人さん。」


「ん?」


「また、恐い夢でも見たの?」


優子は、優しく隼人を抱きしめた。


朝が来なければ良いと思っていたのにな…。


「わたしが守ってあげるから。」


「ありがとう。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る