第41話 不思議な存在 その2
「見せてもらってもいいかな?」
ウルスラは俺にそう言った。
「え? な、何を?」
「何って、リゼ様だよ。見ていいかな?」
「あ……ああ。別に」
「お、おい! ロスペル! 貴様……」
エルナが怒りの声を上げるのもお構いなしに、ウルスラはリゼの方に近寄って行った。
そして、戸惑うリゼの手を取ると、珍しそうにそれをじっと見つめる。
「へぇー……これが魔人形の腕……とても綺麗だ。一見すると普通の木材だけど……目の方は……普通のガラス玉……ふぅん」
興味があるのか無関心なのか、ウルスラはそんな調子でぶつぶつ呟きながらリゼを見回した。
そして、しばらくすると、気がすんだのか、俺の方に戻ってきた。
「で、満足したか?」
俺が訊ねるとそれまで特に感情を表していなかったウルスラは、またしてもニンマリと気味悪く微笑んだ。
「うん。いやぁ、不思議な存在って、いるもんだねぇ」
「……いや、頭に包丁刺さって生きているお前には言われたくないと思うぞ」
きょとんとした顔で俺を見るウルスラ。
どうやら、ウルスラ自身は自分のことを対して不思議な存在とは思っていないらしい。
「で、マイスター。そろそろ、帝都に戻った方がよろしいのでは?」
いらいらした調子でそう言ったのはエルナだった。エルナの言葉を聞いてウルスラはそちらを向き、なぜかニヤリとほほ笑む。
「いやいや。エクスナー少尉。残念だけど、僕も同行させてもらうよ」
「……はぁ? マイスター。貴方は第九研究機関の責任者でしょう?」
エルナは嫌悪感を露わにした表情でウルスラにそう言う。
「あはは。いいんだよ。魔人形生成こそ、ズール帝国……皇帝陛下の悲願なんだ。そして、皮肉なことに其の魔人形になってのは、皇帝陛下の姪であるリゼ様……僕はねぇ、マイスターとして、そして、魔女として、君達の向かっている場所へ同行させてもらうよ」
「……お前、俺達がどこに行くかわかっているのか?」
「もちろん、シコラス様の所だろう?」
そんなことはお見通しだと言わんばかりにウルスラは得意げにそう言った。
しかし、俺としてもこれ以上連れが増えるのは面倒だとは思った。もっとも、俺にとってはそれさえももうどうでもいいことなのだけれど。
「ね? 僕も一緒に行っていいよね?」
「まぁ、俺は別に……」
「私は反対だ」
そう言ったのは……やはり先程から不機嫌そうなエルナなのであった。
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