ハヤト 3

兵士達に身体を持ち上げられ、荷台に乗せられる。

なんでこんな古臭い物に乗せられるのかと疑問に思ったけど、まだここは水の国の敷地内。

文明が遅れてるって事になっている土の国のイメージ的にはこれで合っているのか・・・・。


文明が遅れてるってイメージを植え付けたい癖に、タブレットを簡単に操作してる所を僕以外に見られたらどうするつもりだったのだろうか・・・・と突っ込みたい所だけど、カヤは口が達者だから黙っておこう。

女は怖い。



「皆知らない間に傲慢になっていた。

その結果現女王に闇を作った。

だけどそれに誰も気付かない。

一番の被害者ってもしかしたら女王だったのかもね・・・・・なーんて」



土の国へ戻る途中。

カヤはボソっと呟いた。


諸悪の根源が女王?

まさか・・・・・。

でも今まで起こった事を客観視した時、そんな捉え方もあるんだ。



土の国へ移送中、僕は色んな事を思い出し、そして考えていた。

今まで関わった人たちの事。

死んでいった人たちの事。

城に残っているであろう、涼や女王、眞鍋さんや早見さんの事。


考えた所で結末はきっと良い方向にはいかないだろう。

恐らく皆きっと・・・・・。



でも僕はカヤに言われた通り、良い方向に考える事にした。


涼は風の国の人間を圧倒し、生き延びた。

早見さんは無事眞鍋さんを打倒し、逃げる事に成功した。

女王はきっと周囲の人間が一番先に安全な場所に逃がした事だろう。

眞鍋さんは・・・・・助かってると早見さんに悔いが残る所だから難しいところだ。



そして僕は・・・・。





水の国が風の国の配下になってから2年の月日が流れた。



水の国が襲撃されたあの日。

僕は土の国の計らいで、戦死した事になったらしい。

生きていたら風の国の人間が身体を欲しがるからという理由と、土の国自体も漆黒の翼について少なからず興味があったみたいで、僕の存在を風の国から隠してくれた。


その代わり手荒な真似はしないけど、簡単な身体検査や頭に穴を開けられたり・・・・と色んな検査を受ける日々が続き、病室と検査室を往復するだけの日々が続いていた。

たまーにカヤが覗きにきてくれたけど、自由な時間はほとんど絵を描いていた。

干からびた兄の遺体を永遠に書き続ける。

何枚も何枚も・・・・。




「あー・・・・またその絵。

うん、上手くなったよね。特にこの腕の筋とかリアルになってきた」


背後から画用紙を覗き込むのはカヤだ。



「忘れないように描いてるんだ。

長く生きているとどんどん色んな事を忘れていくから、これだけは忘れないように」



「へぇー・・・・別にそれも忘れても良いんじゃないかって思うんだけど。

ねぇ!今週末一緒にピクニックにでも行かない?」


「ピクニック?」


「いつも部屋に閉じこもってばっかりでしょ?そんなの退屈すぎー!

検査も一通り終わってるし、この前王からもこの国内だったら自由に出歩いて良いって許可も降りてたし、たまには良いじゃない!」



あぁそんな事も言われたんだったっけ。

国内を自由に歩く許可を貰った所で行きたい場所もなければ、目的もないから出歩いてなかったな・・・・そういえば。

僕にとってはこの部屋で絵を描いているのが一番幸せだと感じていたから、出歩くなんて選択肢まるで無かった。

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