真実 1

故郷での用事は2時間もしないうちに終わった。

残りの時間は僕も早見さんも何もしないままホテルでダラダラと過ごした。



・・・・退屈だ。


部屋に備え付けてあったメモ帳に絵を描く。

最初は適当に窓から見えた景色を描いていたけど、あっという間に描くものはなくなり、気づけば僕は兄の遺体を何枚も描いていた。


自分の好きな事をやり続け、死んだ兄が羨ましい。



逃げた両親を探そうと思えば探せたんだろうけど、探さなかった。

自分の理想を押し付け、子供が間違えた方向へ進むとあっさり責任を取らずに尻尾巻いて逃げたクズなんてどうでも良かった。

逃げた所で今までみたく優雅な生活はおくれていないだろうし。


殺して人生を終わりにするより、今までのように他人を顎で使い、欲しい物は何でも手に入れていた生活から180℃変わり、これからは他人の目を気にしつつ、貧しい生活をおくる方死ぬより辛い事だろう。


あいつらも身をもって思い知ればいいさ。

兄の不自由な生活がいかに孤独で悲しいものかという事を。


ま、肝心の兄は不自由も悲しいという感情も、理解出来てはないだろうけど。




そんな事を考えながら、故郷での3泊4日は終了。

帰りの車内も僕と早見さんは喋らないまま戻る。

ホテルへ到着すると、早見さんは業務連絡等で動かなければならない為、僕は1人でまた部屋の中で待機。

涼は討伐へ向かったみたいだ。


やる事がない。

また僕はメモ帳に絵を描く。

兄の遺体をひたすら描く。

何枚も何枚も。

髪の毛と骨しかないあの無残な姿を。


今日ハヤトと係員が戻ってくるんだったっけ?

顔を洗い鏡を覗く。

気のせいか顔にシワとシミが増えてきた気がする。


・・・・まさかね。

だって俺まだ10代だよ?


疲れてんのかな?

そういえば最近目が霞み視界がぼやけるようになってきた。

きっと疲れがたまっているんだ。



今漆黒の翼を起動出来る人間は俺とハヤトのみになった。

ハヤトなんて役にたたないだろうし、自然と俺への負担は増えてきている。


身体も重たくなり、しんどい。

ゆっくり休みたい。

でもそれは出来ない。


ここが正念場だ。

今頑張って踏ん張れば、英雄への道へまた一歩近づく。


それにもう少しでマリアにまた会える。

今度は朝起きた時から寝る時までずっと一緒。

これからは24時間常に一緒にいれる。




やるしかない。



重たい身体に鞭を打って、今日も討伐に精を出す。

やる気はあるものの、以前のように漆黒の翼をうまく使いこなせない。

身体が重たくて、剣を振るのも一苦労だ。

足もモタつく。


・・・・疲れてても頑張るしかない。


重たい身体を無理やり動かすのは中々大変だ。

それにいらつく。

身体が重たいのも、思うように動かないのも、全部がイラつく。

この症状に対して俺は「疲れているから仕方がない」で全て片付けていた。


辛いのも今だけ。

もう少しで楽になるから。

もう少し?それはいつ?どの位時間が経てば楽になる?

なんて事は考えないようにしていた。

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