死ぬと生きる 14



「で、でも、アタシは今、亮にイジメられてるのよ!あいつのせいで一人ぼっちなの!」


冷や汗が、再び苛立ちへと変わる。

過去にアタシがサナエをイジメてたとしても、現在はアタシがイジメられている立場。

あの子は自殺してこの世には存在していないけど、アタシはまだ生きている。

第二の被害者を出す前に、助けるのが先生ってモンでしょ?



「なら私から聞いてあげる。どうして貴方の事をイジメるのか?って」


それなのに、全くアタシの言葉をこいつは、信じていなかった。



「それじゃダメ!そんなんじゃ許さないんだから!ねぇ!亮をなんとかしてよ!

アタシがもし自殺したらどうするの?アンタ、責任取れるの?!」


凄い剣幕で、先生へと駆け寄る。

しかし相変らず、先生は落ち着いたまま、



「イジメた側とイジメられた側、両方の話がまず聞きたいの。

そして、クラスの子達の話もね。

貴方には勿論死んで欲しくない、行き続けて欲しい。

2人で解決しましょう。

大丈夫、私がついているから」


アタシの両肩に手を添えると、先生は優しく微笑んだ。



違う!アタシはそんな事を望んでない!

先生の両手を振り払うと、



「そんなの無理!嫌よ!

あいつらの事、全員叱って!じゃなくちゃ死ぬ!無理!

アタシは絶対に謝らない!許さないんだから!」


ヒステリックに声を上げた。

納得できなかった。

上流の立場に居るアタシが、あんな腐った奴らに頭を下げなくちゃならない事が。


そんなアタシの姿を見て、流石に先生も焦ったのか?



「落ち着いて!今、担任の先生と話をしてくるから。

大丈夫!ちゃんと貴方が以前と同く学校生活を送れるようにするからね」



「いや、無理!なんとかして!

早く、担任にその事を話してきてよ!

アタシがイジメられてるって、報告して!

クラスの連中を叱ってきて!」


そう叫ぶと、先生は何度も首を大きく縦に振り、



「わかった!わかったから落ち着いて。

今、話してくるからね」



アタシの事を必死で宥めると、保健室を出て行った。

室内に、残されたのはアタシだけ。



先生は上手い事言って、アタシの事をなだめたつもりだろうけど、そんなんじゃ満足出来なかった。

クラスの奴らに頭を下げるなんて、アタシのプライドが許さないし、

イジメられてるなんてのも、無理!


どうせ先生は、アタシがイジメられてるって言っても、信じてくれていないだろうし。

何より、この一件でアタシのプライドは、ガタガタに傷ついている。





やるしかない・・・・・。




本気で死ぬつもりはなかった。

ただ、ちょっと驚かせてやろうと思っただけ。

アタシが言った言葉が、嘘ではないって事を。

信じ込ませたかっただけ。



それに、サナエをイジメてる事がバレてたとしても、ここで一度アレをやっちゃえば、

「その罪を思いつめていたんだ・・・」って思ってくれるだろうし。




どちらにしても、・・・・やるしかない。



ベッドに登ると、天井にぶら下がるカーテンレールに、ベルトを引っ掛けた。

後はこれに首を引っ掛けるだけ。


それだけなのに、アタシは戸惑っていた。



怖い。

苦しいのかな?

一瞬の我慢よね?

すぐに先生が戻ってきて、助けてくれるわ。

でも、先生が見つけてくれなかったら?

本当に死んでしまったら・・・・?



死にたくない!

生きたい!



でも、やるしかないの!



大きく深呼吸をした後、覚悟を決め、アタシはベルトに首を引っ掛けた。

そして恐る恐る足を離す。



離した瞬間、首に苦しさと気持ち悪さが圧し掛かり、頭が割れそうに熱くなった。

少しの我慢。

先生が見つけてくれるわ・・・・。



先生・・・・。

早く来て・・・・・。


しかし、先生は戻ってこない。



ダメ・・・。

このままじゃ・・・・。


しばらく悶えた後、プッツリ意識は途絶えた。

あぁ、アタシ。

ここで死ぬんだ。

まだ生きたかったのにな。

悔いだけが残る。

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