ミカ 10

目的地に到着。

先ほどまで眠っていた癖に、涼は一番初めに颯爽と車から降りていった。

アタシも、足取り軽く後をついていく。



今回はアタシの番。


ただそれだけが、頭の中をしめている。

もう 人を殺す という感情が抑えきれずになっていた。

その言葉が、アタシの脳を支配している。

もう人の道を外れているだろう。



玄関前で、数名の教師が一列に並び出迎えていた。

どいつだ?・・・早く、話なんてどうでもいいから!


アタシは、前を歩いていた涼を追い抜かすと、



「ねぇ!校長って誰?早く資料を渡してちょうだい!

さっさと、殺すからさ!」


一列に並んだ教師一人ひとりの顔を覗き込む。

目が合うと、露骨に嫌な顔をしそらす奴や、苦笑いを浮かべる奴。

反応は様々だ。



「ねぇ!早く言いなさいよ!じゃないと、ころ・・・・」


左手を構えた時、後方から肩を思いっきりグイっと引っ張られると、



「おい、出しゃばった真似をするな。リーダーは俺だ」


涼が怖い顔をして、こちらを睨んでいる。

偉そうに、アンタがリーダーだなんて、認めてないっつーの!

・・・って言いたい所なんだけど、今口答えをして、討伐させて貰えない展開とか嫌だからね。

ムカつくけど、黙っとくしかない。



「・・・・」


言いたい事を飲み込むと、素直に後ろへ下がる。

そんなアタシの行動に満足したのか?涼はニヤっと笑うと、



「では初めに、ミーティングから始めましょうか。

どこかゆっくり話を出来る場所へ、案内して下さい」


偉そうに指示を出す。

すると、一番影の薄いオッサンが、ヘコヘコ前に出てきたと思えば、



「は、はい!こちらでございます!」


奥へと手招きをする。



ニヤつきながら、偉そうに歩く涼を見て、アタシは反吐が出そうになった。

キモチワルイ男だ。


今回のミーティングは、いつもより増して長かった。


「最近は、晴れない日が多い」

とか

「雨ばかじゃ、洗濯物が乾かない」

とか、討伐とは関係のない話ばかりしている。


キモ男涼が、ご機嫌に話続けている所を見ると、第一印象が影の薄いオッサンだったけど、

凄く話を聞くのが上手なタイプらしい。

じゃないと、あんな変人と、上手く会話のキャッチボールなんて出来ないわ。

どう見てもあの校長。

仕事が出来るタイプには見えないから、コミュニケーション能力でのし上ったのかしら?

試験があるって言っても、結局は組織なんて なぁなぁ の世界よね。




客室に通されてから3時間が経過。

渡された資料も穴が開くほど眺めたアタシは、頬杖をつきながらあまりの退屈さに外を眺めた。

すると外を見ると、生徒達がパラパラと下校するのが見える。


え?それってヤバくない?

早く討伐しないと、帰っちゃうじゃない!!!


「ねぇ!!ちょっと!!」



今回人を殺すのは、アタシの番。

だからこそ、ターゲットが居なくなり、討伐が中止される事を焦っていたアタシは、

話に夢中になっている涼の肩を揺ぶる。

すると、


「なんだよ!今話してるじゃないか!」


気持ちよく喋っていた所を邪魔された涼は、あからさまに嫌な顔をすると、アタシの手を払いのける。

しかし、そんな事で怯んでいる場合じゃない。

アタシにしてみたら、人を殺すか?殺せないか?が、かかっている。



「違う!話は後でもいいじゃない!外を見て!生徒達が帰ってるわ!」


必死で外を指差すと、



「あっ!」


現在の状況がマズイと察したみたいで、小声で言葉を漏らす。

流石の涼も、焦ったみたいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る