第99話過去との決別 7

「今だ!お前等もヤれ!」


見上げると、藤井が教壇の方を指差し、叫んでいた。

あぁ、なるほど。

掃除用具入れに隠れてると見せかけて、教壇の中に隠れていたのか。

バカだと思っていたけど、少しは賢い所もあるんじゃん。

でも・・・。


敵である俺に背を向け、藤井は相変らず教壇の方を向いていた。

賢いって思ったけど、やっぱりバカ。

敵に背を向けるとどうなるか?って事を、わかっちゃいない。



「早く!おっ・・・・・」


仲間に向かって、叫び続ける藤井の首をスパッと跳ねた。

本当は、楽に殺したくなかったんだけど。

こちらに向かって、敵対心をむき出しにしている分。

先に殺さないと、後々めんどくさい事になりそうだから。



以前の俺なら、たった一発殴られただけで、ビビッてその場から動く事が出来なくなっていた。

しかし、今の俺は違う。

たかが一発殴られたくらいで、怯んでたまるかよ!!!



「おい、仲間が死んだぞ!何かないのかよ!」


教壇の方を睨むと、



「あっ!・・・・」


腰を抜かし、怯えた顔でこちらを見ている石川と志田と目が合う。

今自分達が置かれている状況を察したのか?声が出ないみたいだ。



「・・・酷いなぁ。クラスメイトを椅子で殴るなんて。

他人を傷つけるのは、法律違反だって事、お前達は知ってるよな?」


ゆっくり一歩ずつ、二人に向かって歩いていく。

必死に俺の目を見て、ウンウン頷く。



「じゃあ、わかっているのに、なんで椅子で殴ったんだよ。

凄ぇ、痛かったのに」



さっき縦に首を振っていたと思えば、次は横に首を振る。

これじゃあ、まるで壊れたオモチャだ。


「藤井は俺に歯向かったから、死ぬ事になった。

さて、お前等の事はどうしようかな・・・・・」


その言葉を聞いた途端、更に青ざめる石川と志田。

ヤバイ!笑える!

イジメてた相手に怯えるとか、マジなんなのこいつら。

まぁ、目の前で藤井が殺されたんだ。

自分達の命も危ない事は、薄々感ずいてるのかも知れないけど。




「え?もしかして、お前等。死にたくないとか?」


すると、再び必死に首を縦に振る。

死にたくないとか、ずうずうしい奴。

俺の事はイジメ抜き、自殺にまで追い込んだ癖に!


藤井の事はアッサリ殺したが、こいつらの事は楽に殺さねぇ。

あの時の嫌な思い出を、やり返すんだ!




「そうだなぁ・・・・、おい、床舐めてみろよ」


「えっ?」


驚いた顔をする二人。



「聞こえなかったのか?床を舐めろって言ったんだよ」


「え?あ・・・う・・・・・」


イマイチ、ピンとこないみたいで、二人とも戸惑った表情のまま、やろうとしない。

言う事を聞かないこいつらに、苛立つ。



「早くやれって言ったんだよぉ!!!さっさと舐めろ!殺されたいのか!!」


剣を頭上に振り上げると、



「はいっ!わかったから!やるっ!すぐにやるっ!」


床に這い蹲り、必死に舐め始めた。

最初から言う事は、素直に聞けよな!

俺は毎回、こいつらの言う事を忠実に、聞いてやったのに!



「ははっ・・・・、笑える。

マジで舐めやがったよ~・・・・・」


必死に笑おうとした。

バカにしてやろうと思った。


でも、口から出てくるのは、乾いた笑いばかりで。

あいつらみたく、大爆笑が出来ない。


なんでだよ、俺、変わったのに。

なんで、笑えないんだ・・・・・。

折角あの時の嫌な思いを、やり返したっていうのに、なんで笑えないんだよ!!

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