第67話目の前に居る者 2

昼飯を食い終わり、処刑場へと向かう。



「ねぇ!ねぇ!さっきどうしたの?

ハヤトと言い合ってたじゃん?喧嘩でもしたの?」


後ろからミカがそう言いながら、走ってくる。



「さあね。知らないよ」


やはり先ほどの出来事を、ミカに話そうとは思わなかった。

だって、きっとミカみたいなタイプの人間には、理解出来ない話だから。

内容を話した所で、 ハヤトの事が好き って理由だけで、

ハヤトの味方をするに違いない。

そんな奴に、わざわざ教える必要なんてない。



「根暗!マジ、アンタの事嫌い!むかつく!」


背後から、そう怒鳴るミカ。



「俺も、ミカの事大嫌いだよ」


言い返すと、



「なんですって!アタシに暴言吐いていいと思っているの?!」


更に怒り出す。

これだから、嫌なんだ。

自分は言いたい放題暴言を吐く癖に、自分を1度でも否定されれば、顔を真っ赤にして怒る。

ハヤトもミカも、核となる部分は同じなんだ。




「うるさいよ。さあ、始めよう。モンスターを狩るんだ」


処刑場まで辿り着くと、右手に意識を集中し、腕輪から剣と出す。



「最近の涼って、生意気になったよね。

ちょっとだけ、女王に声をかけられたからって、調子に乗ってるんじゃないわよ!」


ブツブツ言いながら、ミカも漆黒の翼を起動する。



調子に乗っているんじゃない。

ミカは、全然わかっていないな。


俺は、変わったんだ。

胸を張り、ミカに言い返す事が出来る立場まで、辿り着いたんだ。


俺に命令できるのは、生きる場所を与えてくれた真鍋さんと女王様だけ。

そして、会話出来るのは、寮母さんとマリアだけだ。


両手両足を拘束された、モンスターを手当たり次第に斬っていく。

汚らしいモンスターの叫び声が響く室内。



「うぇっ、気持ち悪」


ミカも文句を言いながら、ザクザクモンスターを討伐する。



目の前に居る者が、俺には 物 にしか見えなかった。

だから、モンスターを斬った所で、いつもなら何も思わなかったのだけれど・・・・、


剣を振り下ろそうとした時、一人の小さな子供の形をしたモンスターと目が合った。



「殺さないで!お願い!話を聞いて!」


泣き叫びながら、俺に何かを訴えようとするモンスター。

俺は、その小さなモンスターから、目を逸らす事が出来ず、動けなくなっていた。

モンスターは俺に、訴え始める。



「カードを盗んだ事は悪いって思ってる!

お店にだって、謝りに行った!

カード持ってないと、友達にバカにされるんだ!

買いたくても、お小遣いじゃ買えないし、お母さんに言った所で買ってくれない!」



生きる為に犯していい罪


頭の中に、そのフレーズが浮かび上がる。




「カードを、たった1回盗んだだけで、殺されるなんて嫌だよ!!!

だって、盗まなくちゃ俺、仲間はずれにされるから!!!!」



イジメら・・・れ・・・・る・・・・。

だから、この子は、カードを盗んだ。

イジメられるのが嫌だから、イジメられて居場所が無くなり、死ぬのが嫌だから。

だから、盗んだ。

生きる為に犯した罪。



まるで、昔の俺みたいだ。

イジメられて、居場所がなくて苦しんだ、弱者の俺・・・。



両手と両足が震えてくる。

剣を振り下ろす事が出来ない。


その場に俺は、崩れた。



ここに居るのは、俺と同じ、弱者の人間?

仲間を コ   ロ ス の  か?

俺は、俺を殺そうとしている・・・・・・・・?

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