第41話混乱 4
「実戦トレーニングって、どんな感じなのかな?」
ハヤトはそう言うと、目をつぶり始めた。
しばらくすると、両腕が光り、ゆっくり腕輪からヌンチャクが出てくる。
「さぁ?わからないよ」
俺も右手にある腕輪に意識を集中させると、そこから剣を取り出す。
「このヌンチャクで、どうやってモンスターを倒すのだろう?
そもそも、ヌンチャクでモンスターを倒すなんて事、出来るのだろうか?」
何言ってるんだ。
漆黒の翼を持った俺達は、普通の人間とは違うんだぞ?
正直、ハヤトの疑い深い所には、ウンザリしていた。
「涼は剣だから、まだリーチがあるから、間合いは取りやすいだろうな。
モンスターって言ったって、僕達は、一度も奴らの姿を見た事がないだろう?
ぶっつけ本番で、奴らを目の前にして、僕達は倒す事が出来るのだろうか?不安になる」
言われてみればそうだ。
俺達はモンスターを見た事はない。
しかし・・・・、
「大丈夫だよ。俺は早く実戦がしたい。
怪我したって、真鍋さんがなんとかしてくれるから心配ないよ」
俺がそう言うと、
「涼は僕より年下なのに、根性すわってて、羨ましいよ」
ハヤトはニコリと笑った。
根性が座ってる?
まぁ、お前みたいな何の苦労もなくダラダラ生きてきた人間とは違うからな。
俺はやっと、死ななくて良い環境で暮らす事が出来るようになったんだ。
今までの辛い過去を考えたら、まだ一度も見たことがない モンスターを殺す なんて、屁でもないさ。
その後、俺達は真鍋さんが作った、訓練プログラムを使用し、漆黒の翼を使いこなす練習をした。
しかし、まだ練習の段階。
限界は訪れる。
「そろそろ食事休憩に入ろう。ミカにも声かけないと!」
リーダーであるハヤトがその場を仕切り、休憩に入る事になった。
俺よりも、生ぬるいコイツがリーダーとはね、そんな疑問を抱きながら、食堂へと歩く。
それぞれ食べる物をトレーに乗せ運ぶ。
「アタシはココに座ろうっと!」
そう言い、ミカが座ったのは、ハヤトの隣だった。
どうせそこに座ると思っていたけれど・・・・。
俺は、ハヤトの真正面に座った。
ここに座ると、ミカと向き合う形になるんだけど・・・・まぁ、仕方がない。
「じゃあ、皆席についた事だし、食べるとしよう」
ハヤトの号令に従い、個々に 頂きます を言うと、黙々と食べ始める。
その沈黙を破るのは、やはりハヤトで、
「そういえば、ミカさんはどうして漆黒の翼を埋められたの?」
「漆黒の翼?え?あ、もしかしてこの腕輪の事?」
ミカはそう言うと、自分の左手にある腕輪を指差した。
「アタシは、意識がないうちに勝手に!・・・ってね。
女王がナンチャラ~とか、真鍋が言ってたけど、よく意味わかんないのよね。
ハヤトは?」
女王?初めて聞いた単語だ。
この漆黒の翼・・・いやClear sky に女王が関わっているというのか?
「僕は、道路に猫が飛び出してさ。
助けようとしたら、僕が轢かれたっていう・・・マヌケだよね」
そう言い、テレながら笑うハヤトと、それを見て、
「カッコイイ!!ハヤト最高!!」
ベタ褒めするミカ。
何がカッコイイだ!
つーか、猫を助けるとかね・・・・。
甘ちゃんは自分の危機より、他の物に目が行くってか・・・・。
「涼は?」
「え?」
まさか俺にまで質問が飛んで来るとは思わず、驚く。
「アンタは何で、ココに来たの?きっかけは?」
グイグイ前に出てくるミカにアタフタした俺は、
「え・・あの・・、学校の前で倒れて・・・・」
オドオドしながら答えると、
「何それ?キモ」
バッサリ切り捨てられた。
キモっていうなら、聞くんじゃねーよ!
と思ったけど、反論はしない。
だって、ミカって、どことなくうちの母親に似ているから。
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