さばんなちほー&じゃんぐるちほー
不思議なものです。かばんという子。あの子が自分を探していく道中で、むしろわれわれフレンズのほうが教えられていくような――ちほーによっては球を蹴る遊びもなされるようになったそうではないですか。
狩りごっこなど、けもの由来の「遊び」こそあれど、われわれにとってヒトがなしていた「ごらく」行為といえばPPPのコンサートや温泉くらいしかなかったのですから。
われわれはこれまで以上に多くのもので楽しめるようになりました。
われわれの中でしか考えられなかったこの世界には、実はもっとたくさんの楽しいことが眠っていた。このことに、気付かされたように思うのです。
……話が逸れてしまいましたね。
約束、ですからね。
われわれが見聞きしたほかのちほーのフレンズの話、聞かせてあげましょう。
「ハロ~~~、ジャガーで~す」
「なんかその紹介、多方面で危険な気がする。まるで危険な夜ふかしが始まるような……」
ジャパリパークはサ……いろんな気候によってちほーが分かれててサ……
はっ、われわれは何を……
「フォッサちゃんの考えすぎじゃない? もっとどっしりと構えていきましょう?」
「……インドゾウはどっしりすぎるのよ」
「あら~ひどーい」
「夜!? 夜なら本気出す!」
「あははー! たーのしー!」
「……まあいいわ。それよりよ。あのトラブルメーカーのサーバルが連れてきたかばんって子。あの子の話、聞いた?」
「あー、なんかアライさんとフェネックもいろいろ聞いてきたね。不思議な子だよね。おそらくヒトらしいって話だけど」
「……オセロット。あなたは木から降りてきたら?」
「オセロットは木の上にいるからオセロットだもの」
「……はぁ。まあ、そう言うと思ったけどね」
かばんの話となると、こうしてじゃんぐるちほーのフレンズたちは一同に会してやいのやいのと盛り上がるのだそうです。
もっとも、それはどこのちほーでもそう。
そう、フレンズはもうすっかりかばんに骨抜きにされているのですよ。
メロメロです。
「ボスと唯一話ができるというだけでもタダモノじゃない感あったわよね」
「それだけじゃない。あの子はセルリアンと出くわした時にもうまく追い払ったそうじゃない。バスの時一緒に作業してて思ったけど、やっぱりあの子には特別な何かがあると思ったよね」
「博士がヒトのもたらした叡智って言ってたあの話……あの話、信じますか?」
「クジャク、か」
「私達の身体をまとっていたこの皮のようなもの――『服』っていうんですってね。でも、これを外してつるつるになってしまった私は、美しさが損なわれるのではないかと、私が私でなくなってしまうのではないか……そういう怖さもあります」
「衣装のきらびやかさには自信のある私も、それは少しは思うわね」
「インドゾウは服がかなり薄い方だと思うが……」
「むー、あたしも、寒いのはやだなー。このエリマキでの体温調節でも追いつかなさそうじゃないか」
「何を言うか! 常に脱皮を繰り返していたキングコブラにとってはその程度、些細なこと! 服を脱ぐなんていうのは簡単なことだ! 服がなくともお前たちがお前たちでなくなるなんてことはない! クジャクとてその美しい尾があるではないか!」
「き、キングコブラさん……」
「そうだぞみんな! そこのマレーヤマネコを見習うがよい!」
キングコブラの言葉とともにみんながいっせいに振り向いたのです。
そうしたら、なんということでしょう。マレーヤマネコが我先にとつるんつるんのお肌をさらしているではないですか。
「――!? って、おい! な、なんだその、その……つるつるは!」
「にゃにゃっ!? うっかり脱いだまま着てくるのを忘れてきてしまったにゃっ!」
「どんなうっかりだよ! 皮がないとスースーするだろ! 気づけよ!」
「あははー! かおとあしのいろとおなじだー! わーい! きれー!」
「そうそう! オカピの美脚は脱いでもスゴイ!ってね!」
「お前もかい!」
「……ん。オセロットも負けてない。結構、スゴイよ」
「って、おおい! 木から降りるのもめんどくさがるのにそこはノるんかい!」
実際、スゴかった。とこの場にいたフレンズたちは口々に言うのです。
むっはー! たまりません!
……とマーゲイなら鼻血を出しそうですね。
「おおっみんなやるねぇ! 私はポーズで攻めるぞぅ! がるるー!」
仁王立ちでビシィ!と決めるミナミコアリクイ。なかなかにあざとかわいらしいさまが想像できますね。
と、まあこのように?
じゃんぐるちほーのフレンズは開放的なのです。
なんだかわれわれも話していてちょっと積極的になってきてしまうような、そんな錯覚にさえおちいるのです。
「おぉお、おい、なんかおかしな空気になってるぞ!? わ、私は脱がないぞ!? 脱がないんだからな!?」
「……フォッサちゃん」
「お、おう? く、クジャクもそう思うだろ?」
「――ううん。あの子たち、とても美しくて、まぶしい。私も、じゃんぐるのフレンズとして、あの子たちと同じ輝きが欲しい――私も、輝きたい――!」
そう言って、先程までは露出するのを少しためらっていたクジャクも、すらりとした肌色を、惜しげもなくあらわにしたのです。
「わ、わわー! そ、そんなあられもない!」
「ああ……なんでしょう。この身体の奥底からわいてくる昂ぶり……これが、私たちけものの、原初の悦び――なのでしょうか?」
「何言っちゃってんの!? わ、私は脱がないからな!」
「脱げないと言うのなら私が手伝ってやるぞ! 困っているのならこの私、キングコブラを頼るがいい! フフフ。そこで縮こまってるタスマニアデビルも……さあ!」
「ひ、ひぃっ!」
「こ、こっち来んなー!」
じゃんぐるはいつもおおさわぎ。キングコブラとの狩りごっこのようなじゃれ合いが、はじまったのでした。
「……うん、ここの土。おいしい」
そんなたのしそーなやり取りのなか、実は誰よりも先に脱いでゴロゴロしながら、舌と体全体で土の感触を味わっていたアクシスジカなのでありました。
ちゃんちゃん。
「ふわああ~~ところで、私の尺は~? この先はもっと展開を考えて書くのよ~?」
――と、カバさんが浅瀬の中で、素肌の沐浴を楽しみながらもかまってもらえず寂しかったとかなんとかだそうなのです。
――ちょうどいいところなのでこのへんにしましょうか。のどがかわいたのです。そこで汲んでくるのです。
なんですか? それよりまだまだいろんなフレンズがいるじゃないか。もっといろんなフレンズのことを聞かせてくれって?
まったく、ヒトというのは欲しがりなフレンズですね。
もっとも、その「興味」――知的な興奮という作用が、あなた方人間に叡智を授けるのかもしれませんね。じゃあその人類の新たな叡智にまた触れるとしましょう。
カレー。
――あれは、素晴らしい料理でした。
けれど、もっと作れるでしょう?
わかっているのですよ? われわれはかしこいので。
さあ、ここから先の話を聞きたくば、はやくそこの本に載っているほかの料理も、作ってみせるのです。そうすれば、ほかのちほーの話も教えてやるのです。
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