第24話 他種族にも音ゲーが知れ渡り第4の音ゲー出現!
「音ゲーじゃと?」
洞窟の中に住む身長の低い種族の一人が睨みつける。
筋肉ムキムキで髭が濃い彼等こそドワーフと呼ばれる種族であった。
主に鍛冶等を行なって生活をしている彼等は森に住むエルフと交流があり現在一人のエルフがドワーフの元へ物々交換に訪れていた。
「えぇ、私達の村にギターマニアと言う音ゲーが人間の手によって設置されましてね。これがまた大盛況で貴方方ドワーフの方々共音楽を通じて交流を深められたらと思いまして・・・」
「はんっそれでお前等と仲良くしろってか?無茶言うんじゃねぇよ!」
エルフと物々交換で交流が在るとは言えお互いを自分達より下等種族と思っている者同士である為そう簡単にはいかなかった。
「まぁそれでも一度試しにプレイしに来てくださいよ」
「ふんっ、まぁ次回の物々交換は俺達がそっちに覗う番だからな。その時にでも試してやるよ」
「はいっ」
互いに出来ない事を出来ると言う事で認め合ってはいるのだが先祖より交流はあっても今一歩踏み出しきれないお互いの歩み寄りの為にエルフの男は音ゲーを使用しようと考えていた。
音楽は国境を越えると言う言葉は異世界でも有効のようであった。
「それでは私はこれで」
「あぁ、またな・・・」
そう言い残しエルフはドワーフから得た調理器具や武器を荷台に乗せて森へ向かう。
それを見送るドワーフ・・・
「音楽・・・か・・・」
そんなドワーフとエルフの会話を聞いていた存在があった。
半透明の体に美しい容姿。
精霊達であった。
「最近人間界で魔力が随分増大していると思ってたんだけど・・・」
「音ゲー、それが関係してそうね」
「魔族を人間が簡単に撃退するくらい力をつけたって噂も耳にしたわよ」
「一度行ってみる必要がありそうね」
精霊達は空を飛び人間の住む国を目指して飛んでいく・・・
そして、人間界に近付いてそれに気付いた。
「な・・・なんなのこの異常な魔力は?!」
「ありえない、精霊王よりも・・・いえ、魔王クラスはあるかもしれないわ」
「しかもこれ1人の人間が所持している魔力みたいだわよ」
「やばい、私こんな魔力持ってるなら人間でも愛してしまうわ」
半精神体である精霊達にとって所有魔力量と言うのは存在の価値そのものである。
その為、魔力の低い人間は精霊達にとって虫けら同然であった。
だが所有魔力量が多いとなると話しは大きく変わってくる。
「あそこよ!」
「あの歩いている人間?!」
「あら?中々ハンサムじゃないの?」
「私濡れて来たわ」
何が濡れたのか分からないが精霊達はその存在を見つけた。
そう、ナコム国からコンマイ国へ帰ってきて現在自分が経営する元奴隷商へ帰宅途中のロクドーである。
そして、所有魔力が高いという事は魔力の塊である精霊達に干渉する事が出来ると言う事でもあった。
「ん?なんだ?人が飛んでいる?」
前世を地球で過ごしていた記憶の在るロクドーはその存在に気付き頭の仲でそれが何か考えた・・・
空を飛ぶ半透明の人間の様な物・・・
そして、ロクドーが行き着いた結論は・・・
「やばい?!ゴーストだ?!」
海外の某ホラー映画であった。
踵を返してロクドーは走り出す!
「ねぇ、ちょっとあの人間私たちに気付いたわよ?!」
「周囲に居る人間も何人か私たちが見えるみたい」
「どうなってるの人間界?!」
「もうだめ、私を抱き締めてー!滅茶苦茶にしてー!!!」
1匹精神崩壊している精霊が居るが4人は逃げるロクドーを追いかける。
ちなみに精霊にとって性別は存在しない、だが自身を男にも女にも1度だけ変化させる事が出来るのであった。
そして、精神崩壊している1匹は既に女体化を完了していた。
ロクドーに一目惚れしていたのだ。
「なんなんだよ?!一体?!」
ロクドーは建物を縫う様に移動して逃げる。
だがその体から発せられる異常な量の魔力は色の付いた煙のように精霊達の目に残りその後を追いかけられる。
そして、遂に袋小路にロクドーは追い詰められた。
「はぁ・・・はぁ・・・なんなんだお前たちは?!」
壁に背を預けながら宙に浮く体の透けた4人にロクドーは叫ぶ。
「貴方こそ何者ですか?」
「その魔力量は異常です」
「音ゲーとやらが関係しているのですか?」
「好きです!愛してます!一生添い遂げさせて下さい!」
最後の1人の叫びにロクドー含め精霊3人も驚きの表情を向ける。
そして、その精霊が既に女に変化しているのに気付いた。
「あ・・・あなたまさか・・・」
「女体化したの?」
「うそ・・・だってまだ出会っただけなのに?」
「不束者ですが宜しくお願いします」
ロクドーに何故か土下座して頭を下げる女体化した精霊。
着物の様な服がフワフワと浮きながら立ちつくす3人の精霊。
そして、ロクドーの胸に熱い何かが込み上げてくる・・・
「キミは・・・どうして俺に?」
「その魔力量、そしてその存在に惚れましたですけん」
どこの県民かと思うような方言で話す精霊にロクドーは手を差し伸べる。
「まだ俺は君の事を知らない、だから交際と言うわけには行かないけど・・・友達からってのはどうかな?」
「・・・そうですよね・・・私の事まだ何にも知らないですもんね・・・」
何故か誘導されているように会話を進めるロクドー。
これが精霊の怖い所であった。
本人の気付かない内に相手を洗脳に近い形で誘導する・・・
ロクドーの抵抗力があるのでまだこの程度で済んでいるが精霊に一目ぼれされた人間は、気付いたら昔から知り合いだったような感じで直ぐ身近に住まわれている事も在る。
だがロクドーの余りに強大な魔力は精霊の洗脳を完全に跳ね返していた。
これが1対1であれば上手くはいかなかっただろう、だが残りの3人の精霊も協力していたのがロクドーを洗脳し始める結果に繋がっていた。
「とりあえず、君たちは一体なんなのかな?」
「私たちは精霊種、北の山に済む精霊です。」
「音ゲーの事を知って人間界に遊びに来たんですが」
「保有魔力量が異常なあなたの事を見つけてやってきました」
「子供は8人は欲しいですね」
やはり一人暴走しているがロクドーは彼女達を見詰める。
空を飛んでいると言う事から体は非常に弱いのだろう。
性別が確定していないが3人共女性の様な柔肌をしていると一見見て取れたロクドーは頷いて話す。
「君達は音ゲーをやってみたいんだよね?それなら一緒に来てくれる?」
そう言ってロクドーの後に続く精霊達。
そのままロクドーは自宅に戻る。
「おかえりなさいロクドーさ・・・ん・・・?」
「ただいまエミ、ちょっと精霊達が来たんだけど・・・お茶飲める?」
「と言うかこの女の人私達が見えてる?」
「この人間も魔力結構高いよ」
「これが人間の住む家と言うやつか」
「妹さんですか?私、子作りを前提に婚約させてもらってるアカリと言います!」
女体化した精霊のその一言に3人の精霊は完全に開いた口が塞がらなかった。
そう、真名と呼ばれる精霊の本当の名前を名乗ってしまったのだ。
真名とは精霊にとって決して他人に教えてはいけない物、それを呼ばれると精霊は呼んだ相手の命令に従ってしまうのだ。
「あぁ、このアカリの言う事は置いといて。ちょっと音ゲー部屋借りるよ」
「えっ?あぁはい、また新しい音ゲーですか?」
「うん、彼女達にピッタリのやつをね」
そう言って部屋に入った後に続く精霊達とエミ。
ロクドーの出す新しい音ゲーと言う事でエミも見逃せないのだ。
そして、開いているスペースにロクドーは立ち両手を広げて構える・・・
「スキル『創造具現化』を発動!」
まばゆい光の粒子が集まりそれを形作っていく・・・
そのとんでもない魔力に精霊は驚愕した。
平常時に放出されていた魔力量で一気にロクドーのMPが消費されるのを精霊達は感じ取ったのだ。
そしてそれは完全な形となった。
黄色い筐体に丸いボタンが9個・・・
意識が飛びそうになったロクドーであったが踏ん張り切り意識を失わないで耐えた。
「これが新しい音ゲー『ポップンでミュージック』です!」
異世界に第4の音ゲー『ポップンでミュージック』が出現した瞬間であった!
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