第51話独り言


「木村さん、気分はどうですか?」


「うーん、そうですね。殺人鬼、サイコパスについて考えてみました。これは、独り言として聞き流して下さい。佐々木伸夫さんは、実はIQ200の頭脳の持ち主だったんじゃないですかね。彼は、うつ病を発症する前に外資系の会社に勤めていて常に業務成績はトップ。しかし、裏の顔はサディスティクな人間。それが、露呈して仕事をクビになり、このクリニックに通い障害者年金を受給しようとした。しかし、診断書の内容に納得のいかなかった彼は、このクリニック徳明会のライバルの薬新会のクリニックに転院した。そこで、薬新会の精神科医とカウンセラーが共謀して佐々木伸夫を殺し、それが、ライバルの徳明会のクリニックの医師の仕業にしようと目論んだ。徳明会が潰れれば薬新会は、飛躍する。驚くほどにね。」


「なるほど、素晴らしい洞察力です。さすが刑事さん。」


「しかし、気になる事が一つだけあります。あなたは、佐々木伸夫がサイコパスになりうる可能性を秘めていると気が付いてあの薬を処方しましたね?」


「それは、医師としてはお答え出来ません。」


木佐木は、手を擦った。


「興奮剤、これは、転院した薬新会も懸念して処方しなかった。木佐木先生あなたは、彼の本当の能力を引きずり出したかった。しかし、佐々木伸夫は理性で踏みとどまった。彼は素晴らしい精神力です。では、独り言は終わりにします。」


太郎は、静かに診察室を出た。



薬新会の精神科医とカウンセラーが逮捕された。


佐々木伸夫の部屋には薬新会のカウンセラーの血痕が残っていた。


佐々木伸夫を自宅で撲殺した後にビルの屋上に放置した。


佐々木伸夫は、ベッドの裏に薬新会に通院していた証拠の診察券をガムテープで貼って隠していたのだ。


薬新会のカウンセラーは、それを見逃した。


薬新会の精神科医は、木佐木恵の元夫の原田保でカウンセラーの竜崎繁とは恋仲でありゲイだった。原田が竜崎を洗脳して佐々木伸夫を殺害させたのだ。


竜崎繁もまた、IQ200の頭脳の持ち主であったが佐々木伸夫と同じくサイコパスだった。


佐々木伸夫は、死体博覧会と称したホームページを開いていて世界中から死体画像などを集めて公開していた。


それが、露呈し職を追われたのだ。


「恐いなーあずあず、頭脳明晰なのも考えもんだな。」


春男は、梓に言い聞かせるように言った。


「そうですね。やっぱり使い方次第ですよね。そういえば、喜多島さんカウンセリング受けたんですか?」


「ドタキャンに決まってるだろ、事件は、解決したんだから、誰が自分の頭の中を知りたいかよ。なぁ、太郎?」


「ん?俺は受けたけどね。健康診断と変わらないよ。あ、後、春男ちゃん木佐木先生に警察官だって見抜かれてたよ。警察官失格だね。」


春男は、飲んでいたコーラを吹き出した。


「うるせー!俺は、鑑識なんだよ。お前みたいなざっぱな仕事はしてねーんだよ。繊細で緻密で才能と根気が無いと無理なんだよ。」


「ふーん、木佐木先生の前でデレデレしてたの緑ちゃんに言っちゃおっかな~。」


「てめえ、汚ねぇぞ!」


「それは、問題ですね。喜多島さん、わたしからも緑に報告しないと。」


「あずあずまで!デレデレなんてしてねーよ!」


春男が、真っ赤になって否定するので太郎と梓は笑った。


「そういえば、太郎、お前のIQってまさか?」


太郎は、背を向けてルナとレナの顔を挟んでヨシヨシと撫でていた。


恐ろしい結果ですねと木佐木恵の声を太郎は思い出していた。

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