第42話駅前ベンチ
お盆休みでも、予定なんて無い。
海や山に行ったのはいつだったか思い出せない。
沼田洋平が部屋に閉じ籠ってから一年間の月日が流れた。
両親は、最初は文句を言っていたが、今は、いない存在にされた。
中学生の時は駅前で友人と良くたむろして語り合った。
しかし、高校生になり友人が交通事故で亡くなり洋平は学校に行かなくなった。
違う高校に通っていた友人だったが、いつも洋平の道しるべだった。
光であり希望だった。
友人が亡くなり洋平の見る空の色は変化した。青空が灰色になり体に力が入らなくなった。
外の世界は、暑く気だるい。昼間寝て、夜起きる生活は定着した。
しかし、たまに夜、駅前のベンチに座りに行く。昼間は賑やかな商店街も静かに沈むように眠っている。
いいじゃん、いいじゃん。
友人の口癖を真似する。
「いいじゃん、いいじゃん。」
どこかでまだ、友人が使っているような錯覚を覚える。
編集メールで編集画像を追加削除
ここにページを追加
ここに章を追加
218ページ
高校生になったら駅前のコンビニで一緒にバイトしようと約束していた。
果たされない約束にしがみついている自分がコンビニのネオンの光で照らし出されている。
昨日、自分の留年が決まった。
部屋の扉の下から紙が一枚置いてあった。
洋平は、秋になり高校の制服を着て、いいじゃん、いいじゃんと呟いて学校へと向かい駅前のベンチを通りすぎて電車に乗った。
電車の中から中学時代の自分達の姿を見下ろして苦笑いをした。
そして、眩しいと感じた瞬間に洋平は記憶を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます