第17変死体



8月に入り猛暑日が続く中、連続して変死体が腐敗した姿で発見された。


「木村さん大丈夫ですか?」


紙袋にゲーゲー木村太郎は吐いていた。


「おいおい木村、現場検証終わってから来いよ。死臭とお前のゲロで仕事になんねぇんだよ。」


鑑識の喜多島春男が迷惑そうな顔をしてゲーゲー吐いている木村に言った。


「まーまー、喜多島さん、珍しく木村さんが現場見たいって言い出したんで勘弁してあげて下さいよ。」


岸谷梓は、頭を下げて言った。


「気紛れ刑事に付き合ってらんねぇよ。早く事件解決しろ!」


「ちょっと…。春男ちゃんさ冷たいじゃない。昔は、春男ちゃんもゲーゲー吐いていたのに。」


太郎は、梓の肩に顎を乗せながら言った。


「マジっすか?喜多島さんが?」


喜多島の後輩が思わず笑い声を上げた。


喜多島は、固まって太郎と梓を無視して仕事を始めた。


「春男ちゃん、これまでの変死体に共通点とかある?」


「…。ある。みんな、髪の毛は白髪になって歯は、ボロボロ、でも、夢を見るように穏やかな顔をして死んでる。」


「死因は?」


「何らかの、薬物による過剰摂取のため、意識をなくして死んでる。」


梓は、半分白骨化した死体を見て首を傾げた。


「その、何らかの、薬物って何ですか?」


「あずあず、それが死体から採取出来てたら俺らは、報告してる。」


喜多島は、ずれたメガネを中指で戻してイライラしてる様子である。


「うえ!」


また、太郎が吐いたので梓は、喜多島に睨まれる前に太郎の腕を掴んで署に戻った。


仮眠室で太郎を寝かせると梓は、自分も畳の上に転がった。


最近、熱帯夜が続きで梓は、寝不足だった。


「あずあず、事件の事何か分かった?」


「木村さんが、分からないのにわたしが分かる訳ないじゃないですか!」


「あずあず、今回、本庁も捜査に乗り出すらしいよ。」


「本当ですか?」


本庁が、動くなんて珍しい。


「おい!木村太郎はいるか?」


いきなり、強面の背の高い男が仮眠室に入って来た。


「あれあれ、前園君?」


太郎は、むっくり布団から起き上がって聞いた。


「久しぶりだな、木村、俺を覚えてるのか?」


「そりゃ、同期で大活躍してる前園剛を知らない人はいないでしょう?」


太郎は、鼻の穴をほじりながら大きなオナラをして言った。


「相変わらずだな、木村は、本庁に何回も要請されてんのに来ないって有名だぞ!」


「だって、所轄が良いもん。本庁じゃあ、俺なんて水槽の水を抜かれた出目金魚だし。君と違ってキャリア組じゃないんだよ。」


前園は、呆れたような顔をしてため息をついた。


「お前、警察学校時代とは随分と変わって変人って言われてるらしいじゃないか、本当かよ?」


「すみません、木村さんの部下の岸谷梓です。木村さんって警察学校時代から変人だったんですか?」


「いやいや、天才だよ。体力、知力、統率力、全てにおいて周りを超越してたよ。」


前園は、梓に真面目に答えた。


「ふーん、そんな美化しないでよ。俺は、警察学校嫌いだったし。今は、のんびりしてるよ。」


「ほぅ、じゃあ、今回の連続変死体事件は、俺が、もらう。キャリアの検挙率No.2は、肩身が狭くてな。じゃあ、のんびり寝てろ。」


前園は、そう言うと仮眠室から出て行った。

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