星の夢

美坂イリス

第1話

 見上げた夜空に、一筋の光。昔の人は流れ星を「神様が天国の扉を一瞬開けた時にもれた光」って例えたらしいけど、それも納得出来る。


 ここは公園、時刻は夜の十一時二十三分。この時間にもなれば、周りを通る車もない。つまり、星が見えやすいと言うこと。…まあ、その代わりに変態さんも活発に活動を始めているかもしれないけれども。

「あれがベテルギウス、あっちがシリウス、で、これがプロキオンだから…」

 南の空を向いて、星をなぞる。ベテルギウスは巨人の脇の下、オリオン座の右肩。そこを基点に、おおいぬ座とこいぬ座をつなげる。これで、冬の大三角の完成。完成、はいいんだけど。

「もうちょっと、厚着してくればよかったかなぁ…」

 そう、思い付きで来てしまったからマフラーも手袋もつけていない。そして、今日は今年最強の寒波が襲ってきたちょうどその日。なんで、こんな日に出てきてしまったんだろう。激しく後悔している。

「あの子にも、見せたいんだけどな…」

 そうつぶやいて、わたしはため息をつく。そして、遠く離れた彼女の笑顔を思い出す。


 神様がいるのなら。どうか、この小さな願いを叶えてください。

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