二人

 夏休みが始まって数日経った。わたしと夜空は毎日のように会って勉強したり勉強したり勉強したりしていた。

 いや、本当に勉強しかしてないです。

 あの、たまには駅前とかに遊びに行ったりしないのでしょうか。ねえ、夜空さん、ちょっとでいいんで。

 「ダメよ皐月。宿題があと少しで終わるもの」

 二人で炎天下の通学路を歩いている。

 帽子に日傘、しかし制服の夜空はまっすぐ前を向いて歩いている。わたしは同じように制服だけど夜空とは違って半そでのポロシャツをブラウスの代わりに着ている。

 「え、でもあと読書感想文と理科研究と家庭科のエプロン残ってる」

 「すぐに終わるわよ」

 夜空はそれはそれはいい笑顔でこちらに視線を向けた。たぶん彼女はSっ気があるんだと思う。わたしをいじめて楽しいに違いない。最終的にそれを許してしまうわたしの甘さにも問題があるのかもしれないけどさ。でも夜空って結構押しが強いからなかなか逆らえないんだよね。

 「皐月?」

 「なに?」

 「今何か失礼なことを考えていなかった?」

 「いいえ、決してそんなことは」

 どうかしら、と言いつつも夜空は楽しそうだ。やっぱりS気質なんだろう。

 今日は風もなく通学路には日影もない。これだと日焼けしちゃうなあ。だからって夜空のように紫外線を防御はしないんだけど。せいぜいが日焼け止めを塗るくらいだ。

 面倒なんだ。

 そういうの。

 気にしなきゃと思わないわけではない。

 どうにかしなきゃと思わないわけでもない。

 ただ単に、食指が伸びないだけであって。

 「ねえ」

 「うん」

 「今日は読書感想文やりましょうか」

 「わかった。なにかお勧めの本があったら教えて」

 「私のお勧め? いろいろあるわよ」

 その後夜空は延々と、長いこと、滾々と、唯諾々と、もう言い表せないくらい大量の本を勧めてきた。夜空さんは読書家だからね。わたしも読書する方だけど夜空には敵わない。

 だから本当に勘弁してください。

 そう言ってわたしが泣くまで夜空の本紹介は続いた。

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