悪化
朝、いつもより早く登校してみたら予想どおりの事態が展開されていた。
下駄箱にはゴミ。
机には落書き。
椅子はへし折れている。
まあ、こんなところが限界だろう。先日の机脱走事件から一週間ほどたっているが、この手の嫌がらせは日々悪化している。
とりあえず状況の写真を撮って、記録を残してから原状復帰に努める。ロッカーまではまだ手をつけられていないから、きっと明日あたり荒らされるだろう。机の落書きが彫刻に変わるのはいつになるやら。そろそろ早起きが面倒になってきたわたしです。
でもたまになにもされていない時がある。そういうときは決まって夜空さんが下駄箱ではなく図書室の方から教室にやってくるのだ。
なんだかんだでお人よしなのかもしれない。
本人になにか言ったところでぷいっとそっぽを向かれてしまうだけだろうからなにも言わないけど。とりあえず今のところ人的被害が出ていない。そのことを喜ぶとしよう。
犯人については明白だけど、これといってなにかをするつもりはない。
わたしは喧嘩をする度胸や、説得をするだけの対話力、向き合おうとする根性を持ち合わせていない。ただ面倒にならないようにするだけである。
ちなみに教師は当てにしない。
中学校教師というのはえてして変な人が多いのだ。そりゃあもうびっくりするくらいに。竹刀を振り回して生徒を威嚇する美術教師とか、お気に入りの生徒に媚を売って他の生徒から総スカンを喰らっている英語教師なんてのはまだいい。なぜか俺様口調で男前で慕われるアタシを演出する理科教師など鬱陶しいことこの上ない。そういうわけで教師に相談などもっての他である。
なんてことを総合すると放っておくのが一番いいんだ。消極的で投げやりな方法かもしれないけれど、犯人もそのうち飽きるだろうし、最悪学年が上がったらクラス替えあるし。
……まだ春が終わったばかりだから気の長い話ではあるけれど、そういうこともあるんだろう。とりあえず犯人の目的はわたしを夜空さんから遠ざけて、彼女を孤立させることである。夜空さんの孤立が犯人にとってなんのメリットがあるかは皆目見当がつかないけど。まあ、夜空さんの言うとおり『バカ』なんだろう。そろそろ目的と手段が入れ替わってきている感じあるし。
なんてつらつら考えていたら片づけが終わった。
さーー、もうすぐ他の生徒も登校してくるだろう。一限の英語の予習でもしていよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます