小鳥

いつからだろう。

うちの庭に1羽、鮮やかな色をした小さな客が、居座っていた。


その小さな客は───仮に彼としよう───うちの庭を、あたかも自分の土地であるかのように我が物顔闊歩し、砂を浴び、水場で遊び、げに楽しそうに跳ね回っていた。

それが彼の日課なのか、毎日、毎日、同じ時間に庭に来ては、飽きもせず繰り返していた。


うちの庭が彼のお気に入りの場所になり、久しく経ったある日のこと。

私は縁側で日向ぼっこをしながら、私にとっても何時の間にか日課になっていた、来客の姿を探していた。

すると、居た。

相変わらず、お気に入りの水場の縁に。


だが、様子が変だ。

水場に飛び込むこともなく、暫く毛繕いをしたり縁に沿って跳ねるだけだった。


観察している内に私は気づいた。

彼の右足は白く変色し、後ろ向きに曲がり地面に擦るような位置からピクリとも動いていない。


猫か、或いは烏にでも襲われたのか、彼は負傷していたのだ。


しかし彼は、水浴びこそしなかったものの、まるで怪我など気にしていないかのように跳ね回り、そしてまた、小さな翼を羽ばたかせ低い空へと去っていった。


あまりにも突然だった。

最初の内こそ、餌にはありつけていたのか元気ではあったが、やはり段々と弱々しくなり、鮮やかだった羽根も水簿らしく色艶を失っていった。


そして終には、姿を見せなくなってしまった。


涙こそ流れはしなかったものの、やはりというべきか、私も目に見えて落ち込んでいたようだ。


今でこそ立ち直りはしたものの、来客の無い庭を眺めていると偶に寂しく感じ入ってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る