第6話 深まる気持ち

カラオケにつくとかなえの知らない飲み屋のママさんが

「エンくんひさしぶりーーーーーーー!」

なんて言って抱き着く。


とっさに目をそらすかなえ

(夜の街だもん・・・)

わかってはいたけれど、片思いの相手だけど

心が痛んだ。


片思いの時は、好きな人と一緒にいられるだけで幸せなことなのに

どうして人間は欲深いのだろう。


部屋に入る。

こんな時間まで起きていることなんてないから頭が少しぼーっとする。

エンくんの歌を聴きながら。エンくんはバンドもやっていたって聞いていただけにすごいうまい

歌も得意ではなく、密室にいられる、近くにいるドキドキから歌を入れることができない。


「歌わへんの?」

「エンくんの歌声聞いたりお話しするだけで満足です。」


なんのためのカラオケなのかわからなかったけど


「じゃあ、はなそか」

「緊張して・・・」


コミュ障発動していて意味不明にもほどがあるけど、エンくんはマイクを立てて


「これで緊張せんやろ」


って

三人目(?)をつくった。


「いやいやいや!緊張しますよ!だってエン君は憧れの人なんですよ!?好きな人といたら緊張しますわ!」

「そうか?ありがと。」


軽く告白をスルーされた気がするけれど、かなえの頭の中は

もっと一緒にいたい、眠い、仕事まであと5時間

で占められていた。


「ねむないの?」

エンくんはいつも人を気にかけてくれている人だった。


「眠いです。。。。もしよければ家きてもらえませんか?何もしないので!!」



そう、何とかして一緒にいたかった。少しでも長く一緒に


こんなに必死に引き止めたのは生まれて初めてだった。もっと気の利いた誘い文句のひとつでも言えればよかったのに

こんな怪しさ満載の誘い文句に戸惑いながらもついてきてくれたエンくん

この頃からわがままを聞いてくれていたエンくんの優しさに甘えてしまっていたね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る