第37話 リリスたんのスコート
タローはヴァイオレットさんを追いかけ、山小屋の外へと出る。
「なんか……俺たちすごいレベルで蚊帳の外だよね」
俺はぽつりとつぶやいてしまった。
ミカゲと桔梗はタローのリュックを漁り、プリンを食べていた。ちょうど3こあったので、俺も休憩しプリンを食べることにした。
「ゲームの話をされてもよぉ、俺とか桔梗はわからんわ」
「そうですね。わたしもWi-Fiあたりまではわかりますが、オンラインゲームの話になるとわかりません」
どうやら、ミカゲに桔梗はインターネットに関していろいろ教えていたようだった。桔梗がなにげに詳しいのが意外である。
「魔力と通じるものがありますからね。見えないものが情報を持っていたりしますよね。そういうふうにものを考えると、こっちの世界も魔力はあふれていますよ」
そういうもんなのかな。確かにスマホとか魔法みたいだもんな。その考え方でドラジェさんもスマホのアプリを開発できたんだろう。
そのとき、外からドーン! と鈍い音が聞こえた。
俺たち3人はそれぞれに武器を構え、外に出る。
「や、やめてください! ヴァイオレットさん!!」
タローの叫び声が聞こえる。
走ってタローのほうへ向かうと、ヴァイオレットさんはあたりの影を吸収し、真っ黒に染まっていた。
「ユルさないわ……! アナたはわたしのものだもの!!!」
ずるっと影が全てヴァイオレットさんに吸収されたあとは、全てが真っ黒に染まり、2mぐらいの大きさに巨大化したエルフさんがいた。眼鏡もそのまま巨大化している。
「あ、あれはエリアボスのダークエルフです! ど、どうしましょう!」
俺に問いかけてくるタロー。どうするって言ったって、倒すしかないだろ。
「どういう経緯になったのかはわからないけど、とにかくあの人は鬼武帝の手下だから、倒さないといけないよね」
「そ、そうですね。ぼ、ボクがヴァイオレットさんを足止めするので、和哉さんたちは社を壊すほうをお願いします」
「わかった。怪我するなよ、タロー!」
「は、はいっ!」
タローには責任があったのか、ヴァイオレットさんを倒し、振ったことについてケリをつけるつもりらしい。なので俺たちは社を探し出し壊すことにした。
「キャリーパミュパミュっ!!!」
ドーン! と爆発音がなり、七色の光があたりに飛び散る。
そして……いもざえもんが登場した。
「お久しぶりいもっ! 真☆いもざえもん登場ぉおおおお!!」
あ、真のほうすね。了解。
どうやらいもざえもんの中身は召喚時にランダムなようで、今回の中身は2代目のようだった。ケツプリさんは忙しかったのかな。
「ナニよそのいも。ブチ殺すわよ!」
ぶうんと細い剣がしなり、いもざえもんを両断しようとするダークエルフ。だけど、真いもざえもんは中身が30代のおっさんで、わりとフットワークがよく、大きな動きをするダークエルフの攻撃をかいくぐり、懐に入っていも爆弾を7発投げた。
ドドンドドドドドン!!
激しく連続炸裂するいも爆弾。
順番に爆発すれば綺麗な7色になるのに、今回は炸裂のタイミングが早すぎたようで、微妙な色になってしまったようだ。
「ごめんだいも! ドドメ色になってしまったけど、あとはがんばるいもよ!」
そう言っていもざえもんはすうっと消える。
すっかり召喚獣も慣れてきたんだなぁ。というか真いもざえもんさんは、一番いもざえもんとしての役割を果たしているなぁ。
そのいもざえもんのいも爆弾の煙が収まる頃、タローは次の呪文を素早く編み上げて完成させていた。普段のタローの微妙などんくささはそこにはなかった。
「マジカルミラクルドリームファンタジア! ハートのパートはいつでもひとつ! マジカルリリスチェーンジ!!」
そこにはタローがここの村に来てから、しつこく見ていたリリスたんが立っていた。そしてなぜかスカートをめくり、フリフリのパンツがあらわになる。
その色は、さっきの炸裂したいも爆弾と同じ……ドドメ色であった。
「ええ~!!☆」
「えーっ!!」
微妙にタロー……いやリリスたんと発言がかぶった気がするけど、俺とリリスたんのえーっていう叫び声の意味合いはかなり違っていたことは、そのあとの発言で判明したのだった。
「パンツがひどい色だった!☆」
「なんでスカートめくってんの!?」
「チョっと……ナニわたしをほったらかしているのよ」
ダークエルフのヴァイオレットさんは、俺とリリスたんをジトっとした目で見つめる。あっ、すみません。リリスたんの24話目のパンツの色は俺も気になっていましたので、つい夢中になりました。
「トーンファー☆キィーック!!!」
華麗なヤクザキックをリリスたんがダークエルフに食らわしたあたりで、俺は社を探す作業へと戻ることにした。
3人で手分けして社を探すものの、それらしきものはない。
「うーん、山小屋のまわりは綺麗になってるし、桔梗さ、魔力でおかしな流れとか見つからないかな?」
「あ、そうですね。ちょっと見てみます」
社には魔力が集まってくるらしく、その流れを桔梗に見てもらう。
「わかりました。屋根についている大きなアンテナが社です」
「よっしゃ、早速屋根に上がって壊すぜ!」
ミカゲが五芒戡を使って、俺たちの重力を軽減させる。
「おう、いいぜ。ジャンプしてみろよ和哉」
重力が軽くなった分、俺たちは以前に彩友香がジャンプしたように、軽々とジャンプができるようになり、ふわりと屋根の上まで上がった。
「おお、すげぇ!」
「ええ、ものすごい能力ですね、これ。というか彩友香さまは大丈夫なんでしょうか? ……不安です」
屋根に上がってからも桔梗は彩友香の心配をする。
もうさらわれてから4時間が経過しようとしている。
ここのおばちゃんを倒したら夜になるだろう。だけど、それでも俺たちは急いで山を進まないといけない。彩友香のために。
眼下に広がる夕焼けを見ながら、あとから上がってきたミカゲを合わせた俺たち3人は、急いで社を解体する作業に取り掛かった。
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