第9話
闘技場の王族専用の観覧席には王様と女王様と王女様が座って試合を観ている。その周りを囲うのは護衛であり、俺もその護衛の一人である。
特に何が起こるわけではなく試合は進んで行く。この度は護衛をする身であるため賭け事はできない。辛いところだ。
賭けていない試合を観てもつまらない。
ふぁあ、と欠伸を一つした。はた目で見えたのは騎士が一人、王様の傍へ寄ってくる様子だった。騎士は王様へ何やら囁いている。それを聞いた王様は何やら指示を出している。それを聞いた騎士はその場を去った。……というか、見覚えのある騎士なんだけど。騎士という言葉がぴったりとあてはまるような騎士然とした男。うーん、どこで会ったかな。
首を傾げているとふと王様と目が合った。
王様は手招きをする。
これは俺を呼んでいるのか? 俺は自分の顔を指さして、首を傾げる。「え、俺?」って感じで。すると、王様は「お前だよ」と言わんとばかりに首を縦に振った。
だから、俺は王の近くへ寄り、膝をつく。
王様はこちらを見ずに、剣闘士とモンスターの闘いに注視しながら言った。
「不審者が出たらしい」
「は?」
「とりあえず、外にいる騎士団長と様子を見てきてくれ」
「いや、俺……」
「リーゼロッテのことは大丈夫だ。ここの警備はそもそもしっかりしている。君が一人抜けたところでどうってことはない」
王様の指示はすなわち命令。無下に断るわけにもいかないだろう。それに断る理由もなかった。
「わかりました」
俺はそれを受諾。リーゼロッテ王女にひと言断りを入れてから、観覧席を出る。
観覧席を出れば熱狂の声からは少し遠ざかったような気がした。
そして、
「やあ、また会ったな」と声を掛けてくる男性。
「あ」
そこにいたのは以前闘技場であった男。俺に闘技場でのいろはを教えてくれた親切な男で、騎士然とした印象があったあの男だ。
「ブルーム騎士団団長、クラウス・フライヘル・ヴァルター。まあ、よろしく」
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