第6話 アイテムボックス・・・その名の通りである。

「それではこれが装備品となります」


ルージュと共に同居する事となったヒロネスから簡単な胸当てと短剣を預かるピコハン。

そして、これからの話し合いが続けられる。


主にピコハンが行うのはダンジョン探索。

持ち帰った魔物の遺体やダンジョン内で拾った物はピコハンの所有物でそれをヒロネスが買い取る。

ピコハンの家だが家を建てた建築費は二人の同居分の家賃と食費で相殺する。

稼げたお金はピコハンが欲しいものを頼めばヒロネスが調達する。


主にこれらの事項が決定した。

こうしてピコハンの新しい日常が始まるのであった。




出発準備を済ませたピコハンは変な気分で家を出ようとしていた。

両親からダンジョンに捨てられてそこで助けた年上の女性と同居する事になり今また一人でダンジョンへ向かおうとしているのだから仕方在るまい。


「それじゃこれ」


玄関先でルージュから手渡される紙に自分の血を一滴付けるピコハン。

これもダンジョンから出た魔道具で『生血紙』と言う、これは血を付けた相手が死ぬと紙の色が変わる不思議な紙でピコハンの血を付けて紙は赤色になった。

付ける前が黄色だった事から以前の使用者は亡くなっているのだろう。

ピコハンは知らなかったが死に方で紙の色は様々に変化し、黄色は毒や酸による死亡とされている。

多分、あの蜘蛛の毒にやられた誰かのものだったのだろう。


「では行ってきます」

「ピコハン、無理はしちゃいけないよ」

「あぁ、必ず帰ってくるさ」


二人を残しピコハンはダンジョンへ出発した。

先日とは気分を一新し無理をせずまずは浅い場所で宝物探しをする事にした。

魔物を倒せば倒すほど強くなれる自分の変わった特性を理解したピコハンはとにかく目に付いた魔物は倒していった。


「これどうやって持って帰ろう・・・」


目の前には巨大な蟻の魔物が数匹倒れている。

今まで素手だったのが短剣とは言え武器が在るだけでこれだけ違うのかと驚くピコハンだった。

そんな調子で魔物は倒しても持ち帰れないサイズのモノばかりなので頭を悩ませていたピコハン。

そして、偶然それを発見した。


「危ねっ?!」


巨大な2メートルは在る黒い虫の吐いた液体をかわしたピコハンは壁際まで下がった。

そして、壁を背に追い込まれた振りをして飛び掛ってきた虫を避けたらなんと虫が壁を通過したのだ!?

慌てて体勢を整えて身構えると壁を通り抜けて顔を出す虫の魔物。

虫の魔物からも壁の向こうへは通過出来ても視界は壁だったようで一瞬ピコハンを見失っていた。

そのチャンスにピコハンは頭部に短剣を突き立てて見事に虫の魔物を倒した。

ピコハンを視界に入れようと頭部を前に突き出していたからこその勝利であった。


「うわっ?!なんだこれ・・・通り抜ける・・・」


虫が通過したその部分に手を触れると壁ではなく何もない空間だと言う事が分かりピコハンはその中へ入った。

その中は1本道の通路になっておりその一番奥に宝箱が置かれていた。

テンションが上がって駆け寄りそうになったピコハンだがトラップを警戒しゆっくりと歩いて近付きゆっくりと手では触らず短剣で宝箱を開ける。


「は・・・箱?」


ピコハンが唖然とするのも仕方在るまい、宝箱を開けたらその中にはその半分くらいのサイズの箱が2つ入っていただけなのだ。

だが、この通路の巧妙な隠された状況を考えこれはもしかしたら貴重な箱なのかもしれないとピコハンはその箱を持ち帰るのであった。


「ただいまー!」


元気よく自宅のドアを開くピコハン、なんだかんだ言っても年齢は10歳の少年なのだ。

ピコハンの声に反応してルージュも部屋から出てきて予想よりも早い帰宅に驚く。

そして、ピコハンの抱えている2つの箱に視線をやり驚いた顔を見せる。


「ピコハン・・・それ、もしかして『共有箱』?!」

「共有箱?良く分からないけど通りぬけが出来る不思議な場所の奥に宝箱が在ってその中に入ってたんだ。」


ピコハンはルージュに簡単にその箱を見つけた時の話をする。

ちなみに今回の戦利品は魔物の牙や爪とその2つの箱のみであった。

宝箱自体を持ち帰れないか調べてみたが、どうなっているのか地面に貼り付いているように動かせなくそれは諦めた。

そして、ルージュからその箱の説明を受けて驚きの声を上げるのであった。


「これね、片方に入れた物がもう片方から取り出せるってアイテムなのよ」

「・・・それってもしかして・・・」

「そう、片方を持ち歩けば拾ったアイテムなんかをそのままここに転送する事が可能になったのよ」


ルージュから過去にも同じ箱が見つかった事があり生体以外なら何でも送れるので国同士の公益にしようされているとても貴重な魔法道具だと言う事が分かった。

そう、これが在れば今まで見捨てて来たアイテムや魔物の死体なんかをここに転送する事が出来てダンジョン探索が物凄く捗るのが予想できた。


「とりあえず夕飯今から作るわね、ゆっくりしてて」

「あっはい・・・」


その夜、ルージュの手作り料理を頂きピコハンは翌日からのダンジョン探索に期待するのであった。

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