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□ □ □ □
次の日、とうとう温泉に行く日がやって来た。
今は劉さんの車で劉さん、夏生さん、海斗さん、綾芽と五人で温泉宿へ向かっている最中。他の人達も何台かの車に分かれて向かっている。
ちなみに、綾芽は三列シートの一番後ろでスヤスヤと眠っている。ここにペンがあったら間違いなく顔に落書きしているに違いない。
いや、残念ながら、あったとしても今は無理かも。だって、私の身体、しっかりとチャイルドシートに固定されているんだもの。私の見た目を考えれば当然だ。当然なんだけど、あはは、あはははは……ハァ。
気分はあんまりよろしくない。そして、よろしくない理由はそれだけじゃない。
言わずもがなで、昨日の瑠衣さんと黒木さんのことだ。
あの時、蒼さんと茜さんと計画したこと、ちゃんと上手くいけばいいんだけど。……大丈夫かなぁー?
「なに浮かない顔してんだ?」
「んー」
隣に座る海斗さんからも心配される始末。
「……きのうのことなのよ」
「あ、あー。例のヤツな」
昨日帰ってすぐに綾芽達に連絡して、蒼さんと茜さんの考えも伝えた。
あの時、瑠衣さん、戻ってきた時ちょっと鼻が赤かった。お化粧でなんとか誤魔化してはいたけど、そんなのバレバレだ。強がっていても、ショックを受けていたのは間違いない。
いつも可愛がってもらってる分、なんとかしてあげたいんだ。
「くろきさん、もうほんとうにるいおねーちゃまのことなんかどーでもいーのかな?」
「だからそれを確かめるんだろ?」
「陛下もこの問題には頭を
「はいよ。こいつが元気ねーと、どーも調子
それはなんか悪いね。ごめんなさい。
「瑠衣は仕事が終わってからの合流だったな」
「あぁ。午前中までって言ってたから、そう待たずにすむと思うぜ」
「ったく。世話の焼ける」
そう言いながら、夏生さんは
窓を開けるけれど、寒いもんだから申し訳程度。そんな
「ちょっと、夏生さん? この子もおるんやから」
「あ? あぁ、わりぃ」
綾芽、起きてたの!?
あ、危なぁー。落書きしなくて良かったぁ。
「それにしても、よく許可したよな」
「何が」
夏生さんが
「瑠衣が一緒に行くことだよ」
「
「……
「うっさいわ。どっちにしろ結果オーライなんだからいいだろ」
その点はほんと今更だよ。
もはや今の私に失うものなんてありやしない。
「大体、そんな
「ほかにいいあんありますか?」
「んなもん、二人に任せときゃいーって何度も言ってんだろ? なるようになる」
「とんでもないほうこうにむかってますが、そのてんについてはどのように!?」
「……知るか」
「ほらー!」
だから、私は二人には仲良しでいて欲しいんだよ。
「とりあえず、一週間も
「そうだな。俺としては休暇の間くらい子守はご
「だってよ、チビ」
「おめぇもだよ」
「俺も!?」
なぜ自分だけ外れると思ってた?
夏生さんの中ではまだまだ君もコチラ側ってことだよ、海斗さん。
「チビ、その顔やめろ」
「え?」
「お前、考えてること顔に出すクセ、改めねぇといつか
「なんと」
それは嫌だ!
「そや、自分、知っとる? これから行く宿、出るんやって」
「……え?」
「何が?」
「何がって……海斗、そんな当然のこと聞くん?」
寝転がっていた綾芽が急に起き上がって、前の席の頭を当てるところに腕を巻きつけながら
や、やめておくれ。
私の危険察知センサーは今、瑠衣さんと黒木さんのことで
そんなところに、そんな
「あの二人のことに一生懸命なっててもかまへんけど、連れてかれても知らんでぇ」
「いぃーやぁーっ!」
「うるせぇ!」
そんな怖いこと、耳元で言わないでぇ! そして、夏生さんもうるさいよぅ!
「大丈夫大丈夫。病院とこのよりかは可愛らしいもんやって」
「うそだね! ぜったいうそだね! かおがまじなやつだもん! まがおだもん!」
「大丈夫やって。自分、ウソついたことないやろ?」
「いまウソついてるーっ!」
どの口がそんなこと言うかっ!
この口か、この口が言うんか!?
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