第47話 周囲の反応


 同じクエストを受注しているチームとすれ違うと、ほとんどの人物がカナリアを見てくる。

 凄くいたたまれない。こんな高レベルの背の高い格好いい男の人たちと一緒にいたら、絶対に非難の的だよね。そうカナリアは思っていた。

 そして、その認識をジャッジたちは訂正しようとはしていなかった。


 男が圧倒的に多い「TabTapS!このゲーム」で、まずカナリアと同い年の女子というのはもっと少ない。そんな少女を連れていれば、逆に男たちが羨ましがる。「どうせネカマだろ」と思う人物も多くいる。その一方で、どうやったら「現実世界にいそうな少女」を上手く作成できたのか、知りたいと思ってしまうのだ。

 そして、カナリアが話せば確実に女だと分かる。尚更驚き注目してしまうのだ。


「とりあえずカナリア君」

「はい」

「さっきの復習をしようか」

「はい。私がダウン系の魔法をモンスターにかけます。そこで私は一度離脱。時間が許せば魔法を作成し、使います。味方のHPが減ったら私も回復にまわります」

「そのとおり! 他には?」

「ジャッジさんの依頼があればすぐさま、麻酔弾を作ります。あとはLPが減ってきたら、食事と飲み物を渡しま……」

「違う! 鉱脈とかを見つけたら、掘ること!! 君は職人なんだから」

 ディッチとカナリアの会話を聞いていたPCたちは、この少女が今話題のアクセサリー職人、カナリアであると認識した。

 勿論、ディッチもそのつもりでここで復習させたのだ。

「カナリア。ディッチさんにはLPが減っても食料は渡さなくていい。要らないみたいだし。俺らにはよろしく」

「ジャス! お前!」

「違うんですか? カナリアの発言はかなり的確だと思ったんだけど」

 ジャスティスが褒めるように、カナリアを支持した。

「変にフレンド登録申請されて、カナリアが困るよりもずっといいと思うぞ」

「そのあたりは俺らの視線で威圧」

 ぼそぼそとディスカスとディッチが言い合っている。

「そんなものを怖がるような利巧なやつだけじゃない。イエローカードギリギリでされたら、俺らだって守れるかどうか分からんし」

「この先はジャッジかディスが一緒に回るんだろ? 最悪危ないと思ったら、拠点から出るなって、俺から言っとく」

「現実での知り合いってのは、こういうとき楽だな」

「羨ましかろう」

「カナリアみたいな子ばっかりだったらな」

「そりゃ無理だ」

「羨ましくないな」

 どういう意味で羨ましいとか、羨ましくないとか言っているのか分からないカナリアだった。

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