第33話 胃袋を掴むのが最強の方法

 ゲーム時間で二時間ほど走ったところで、休憩する事になった。

 周囲が砂漠で現在いる場所がオアシスのため、カナリアでは心許ないと、ジャッジとディッチ、それから二人のAIで狩りに行っている。その間、セバスチャンは当然、休むための下準備だ。

 カナリアは手持ち無沙汰になっているものの、結局は素材集めに勤しんでいた。

「あ、これ食べられる木の実だ」

 固い殻に覆われた、ココナツのような実だ。この殻、何かに使えないかなぁとか、思ってしまう。

「ミ・レディ!」

 色々鞄に入れていたら、セバスチャンが慌てたようにやってきた。

「セバスチャン?」

「何をやっているのですか!? あまり遠くへ行かないようにと私も、ジャッジ様たちも仰っていたでしょう!?」

 そんなに遠くに来たつもりはなかったが、とりあえず謝っておく。

「ジャッジ様たちも戻ってきましたよ。食事にしましょう」

 時間を確認したら、一時間近く素材集めをしていたようだった。そんなに経っていたとは驚きである。

「すみません」

 ワンボックスカーのところにつくなり、カナリアは二人とそのAIに謝った。

「どうせ素材集めに熱中しすぎたんだろうが。気をつけろ」

 ジャッジが呆れたように言う。

「はい」

「カナリア君、気にしない。ジャッジはかなり心配性なだけ」

 ディッチが笑って、ごそごそと鞄を漁っている。

「先生……何をやってるんですか?」

「ん? カナリア君が喜びそうなものをいくつか見繕ってきたから、あげようかと思って」

 そう言って渡してきたのは金属類や鉱石類だった。

「ありがとうございます!!」

「で、カナリア君は何を見つけてきたのかな?」

 ディッチに促されるままに、カナリアは鞄の中から取り出していく。

「果物と……素材か」

 感心したように呟いたのは、ジャッジだった。

「こちらはデザートにしましょう。ミ・レディ、今度からは私も連れて行ってください」

 にっこりと微笑んで、セバスチャンが言う。カナリアはそれに頷き、食事となった。


「AIの作る食事も美味しいものだな」

「セバスが特例なだけです。お茶も美味しいですし」

 ディッチとジャッジがほのぼのと話している。

「拠点にいれば、私が担当しているので自然とスキルもあがっているだけです」

「いや、普通そこは飯屋に行くかPCが作るだろ」

 セバスチャンの答えに、ディッチが突っ込んでいた。

「ジャッジ様が私に最初に頼んだのが料理でしたから」

「いい加減、携帯食料に飽きてたんですよ」

「それは、分かる。これ食ったら携帯食料に戻れねぇな」

「ディっさん、俺にこれ求めないでね」

 ディッチのAIまでもが混ざって話している。ディッチのAIは少年の姿をしている。だが、このAIは自立攻撃型と呼ばれるものらしく、勝手に攻撃と防御、回避をするらしい。

「俺がクレリックだからね。その方がやりやすかっただけだよ」

 笑いながらディッチが言っていた。


 そこから最近の話になる。クエストのレクチャーは休息場で行われ、そこでアフタヌーンティの要領でお茶をしていること、カナリアはそれが当たり前だと思っていることを話せば、ディッチがかなり羨ましがった。

「くそっ。助ける立場、俺がしたかった! そうしたら毎日美味い飯とおやつにありつけたのか!!」

 悔しがるのはそこでいいのだろうか。カナリアの中でディッチの印象がだいぶ変わってきている。

「つか、町に降りた時お前らの拠点に寄りたい! 美味い飯食わせてくれ!!」

「俺に言われても。持ち主はカナリアですし。基本フレンドのみ入室ができるようになってます。フレンドはセバスも管理できるでしょうから、おかしなやつは近づけないでしょう」

「お前甘すぎ。そして、カナリア君!」

「は、はいっ!」

「俺ともフレンド登録して!!」

 ご飯につられる形でディッチがフレンド登録を要請してきた。

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