第19話 美玖の覚書⑶


強制ログアウト。現実世界の時間換算で八時間連続で繋いでいる、もしくはゲーム中に寝てしまったと脳波が感知すると、強制ログアウトになる。そうなってしまった場合、ペナルティとして、その日一日ゲームに繋げなくなる。また、具合が悪く薬を飲んでいる場合に、ヘッドギアがそれを感知してしまうと、これまた強制ログアウト。眠くなったら、寝てしまうのが一番。八時間という時間は、ヘッドギアに設定するか、ログイン時に設定できる。

ログイン時の場合、その都度自由に決められるというメリットはあるが、忘れてしまうと大変。ただし、ゲーム中に変えることも出来る。

ヘッドギアで設定した場合は、ゲーム中に変えれない。一度設定してしまうと、ログアウトしてから再設定が必要。同じ時間でやるなら、ヘッドギアで設定するのが一番楽。ただし、ヘッドギアによっては、設定できないものもあるので注意。


弟子入り。手に職を身につけるため、もしくはその職に就くために、熟練のNPC、もしくはPCに習うこと。特にお金はかからない。その代わり、材料費などは全て自費。


お金。こちらの通貨は一ペンシル。一Pと書くらしい。一P=十円くらいの設定らしい。


銀行。冒険者ギルドに支店がある。冒険者ギルドがない村などには派出所があるらしい。本店の場所は今のところ不明。振込み、振り替えなども出来る。貸付は不可。PC同士でのお金のやり取りにも使われる。何故か小切手もあるらしい……。


クエスト報酬と買取報酬について。ギルドカウンターで手渡しと、銀行に口座を作ってそこに自動振込みをしてもらう方法の二種類。自動振込みといっても、即日振込みなので、大半のPCがその方法を使っている。NPCさんも仕事報酬を銀行振り込みにしている人が多いらしい。


拠点について。拠点を作る場合は、いくつか方法がある。

一つは宿屋を長期で借りる方法。いつでも出て行けるのがメリットだが、コストがかなりかかる。

二つ目は建物を借りる方法。長期契約でNPC、もしくはPCから場所を借り受ける。初期費用がかなり抑えられるが、家賃という出費がゲーム内時間の一ヶ月単位で起きる。

三つ目は建物、もしくは部屋を買ってしまう方法。初期費用がかなり高いが、こちらの世界で言う「固定資産税」に近いものを年単位で支払えば大丈夫。ただ、引き払う時や、誰かに付けねらわれている時には向かない方法。

この三つの中で、建物のレイアウトや内装を思いっきりいじりたい時は、三つ目がおすすめ。


 そこまで美玖は書いて、ノートを閉じた。


 かなり面白いし、ジャッジという優しく面倒見のいい人に出会えたからだと思う。それにカウンター業務をやっている社員さんも気にかけてくれている。しばらく行かないと「カナリアちゃん、どっか具合悪いの?」と優しく聞いてくれるのだ。

 祖母に礼を述べた時のほっとした顔を、美玖は忘れられない。


 いろんな人に恵まれているのだと、美玖は強く思った。

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