第9話 クエスト開始!

「……むぅ。これはただの『草』。薬草はそうないんだぁ」

 がさごそと調べれば、ほとんどが「草」「石」と表記される。カナリアが必死になっているのに、セバスチャンはどこ吹く風だ。

「ミ・レディ。敵が来ます。採取は諦めてください」

「ほぇ?」

 カナリアが周囲を敵索するも引っかからない。

「あなたのスキル『索敵』は私よりも下ですよ!? ミ・レディの装備は紙なんですから、タブレットとスマホを出してください!」

「タブレットとスマホですか!?」

 慌ててスマホだけを腰の袋から取り出した。

「タブレットも出す!」

「ええっと……」

「言葉は!?」

 気がついたら敵が近くまで来ていた。

タブレットTablet Retrieve!!」

 タブレットを出した時には既に、攻撃を受けそうになっていた。

――クエストを開始します。チュートリアルクエスト「スマホを使いこなそう! 初級編」です――

 いきなりタブレットから響いてきた声にカナリアは驚く。

「驚いている暇はありません。回避です!!」

 熊のようなモンスターが腕(?)を振り上げてきた。

「右に避けて!!」

 セバスチャンに言われるがまま、何とか避ける。

――スキル「回避」を使用しました。スキルが少し上昇しました。クエストを続けます――

「今度は左に避けてください!」

 さっきよりは早めにセバスチャンが指示してきた。

 これも「TabTapS!このゲーム」をやる人間では珍しいのだが。

――スキル「回避」を使用しました。スキルが少し上昇しました。クエストを続けます。スマホの「ホーム」ボタンを二度タップしてください――

「『ホーム』ボタンってどれ!?」

「ミ・レディのスマホですと、家のマークがありませんか?」

 セバスチャンに言われて再度スマホを見る。下の中ごろに家のマークはあった。

「それを二度タップしてください! 要領はタブレットと一緒です!」

 タップ二回っと。カナリアが必死にスマホと向き合っている間にまた影が差した。

「ミ・レディ! 後ろに避けて!!」

 カナリアも必死になって回避する。

――スキル「回避」を使用しました。スキルが少し上昇しました。クエストを続けます。スマホの選択肢で「ブレイド」を選択してタップしてください――

「えっと!?」

「ミ・レディ。再度後ろに回避! そしてスマホの画面を見てください! そしてブレイドを見つけてください!!」

 次々に指示されてカナリアは少しだけパニックを起こしていた。

 何とか「剣」を見つけて、タップする。

「重っ!!」

 スマホが大剣になり、両手で持とうとしたものの、重すぎてずしりと下がった。

「ミ・レディ! スマホを捨てて回避ッ!!」

 セバスチャンが叫んだものの、カナリアは動けなかった。

 早くも「死に戻り」を体験するのかと思い、目をつぶった瞬間銃声が響いた。

「ミ・レディ!!」

 セバスチャンがカナリアを横に飛ばした。

「大丈夫か?」

 恐る恐る目を開けると、そこにはピストルらしきものを構え、バイクに乗っている男性と大剣を構えた小さな女性がいた。

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