国)No.52「国葬」

 2016年十月十三日にご逝去されたプミポン国王陛下の国葬がさる十月二十六日に執り行われた。


 実に一年を掛けての国葬である。「タイの父」とまで言われた、プミポン国王ゆえのことだろう。いずれにせよ、永い(我々、外国人からすれば、かもしれないが)一年であった。この間、やはりタイ王国は「喪」期間だったのだから。当然ながら経済に与える影響も小さくはなかったと思う。

 夕刻四時から儀式は始まり、夜十時の火葬の儀まで粛々と執り行われた。王宮周辺に詰め掛けたタイ国民の数は亡き国王陛下への敬愛の念の深さを示すように、溢れんばかりの数である。


 私も、十時からの火葬の儀だけは見たいと、テレビの前に座っていたが、実際の状況は放映されなかった。Facebookに上がっていた動画や写真を見ると、夜空に登っていく荼毘の白煙が厳かで、「天に召されて」という表現はこの時のものかとさえ思えた。


 私は日本人タイ王国駐在員の一人として、ほんの十年間だけしか国王陛下のことを知らない。

 しかし、我が国にも天皇陛下はおわす。王室と皇室の違いはあれど、純粋に国民に敬愛されているという点では、タイと日本に浅からぬ縁があるのだろう。日本からは秋篠宮殿下と宮妃のご夫妻で葬儀に参列されていました。


 タイは現実にはこの国葬の儀を終えて、新たな御代に入るわけですが、外国人の私には、まだまだそのような「新たな」という気持ちではないのがタイ国民の本音ではないかと思える。


 二千十九年三月末をもってご退位される今上陛下もご高齢でありますが、日本人としては末長くお元気であられんことを祈るものです。


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 11月2日より「2011年、タイ大洪水」を題材にした作品の連載をスタートさせます。併せてご愛読頂けましたら幸いです。


【古都水没】

“微笑みの国”——タイ王国で巨大洪水と戦った日本人駐在員たちの100日の記録

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