第9話 思考の父、直感の母
自己紹介文にもあるが、私の父はとある国立大学の教授である。
日々思考し、分析し、発表する。それが仕事で天職だと思っている。
翻って母はというと、「考えるな!感じろ!」の直感型である。思ったことをズバズバ言うし、正義感(ただし根拠はない)に満ち溢れている。彼女の古くからの友人は母について「キヨちゃん(母のあだ名)が裁判官なら世の犯罪者はすべて死刑になる」と言っていた。
そして、一人娘の私である。
カクヨムを読んでいただいてる方ならお分かりいただけると思うが、私の気質は完全に父寄りである。
日々つらつらと何かを考え、疑問が生じれば本の虫となり、悩まなくてもいいことに日々悩んでいる(たまにつたない論文まで書く)。
そんな私を母はめんどくさがっていて、父はそれを面白がっている。
私と父が何か正解のない議論をしていると、不機嫌になってドアをバタンと閉めて彼女の寝室に籠城する。
父と母はどう見ても水と油なのだが、なんで夫婦になったのだろう。
アルパカと闘牛。ペンギンとライオンみたいなんだけど。
父はいつも私と母の写真を肌身離さず持ち歩いているのであるが、そこに写っていた若い頃の母は贔屓目に見ても、とても美しかった。
父は、母とお見合いをするまで1度も女性と交際したことがなく、プロポーズする際に母に土下座をしたらしいと親戚から聞いたことがあるのだが、真偽の程は不明である。
お母さんは、いつも私に私のことばかり話している。
私の健康状態。切った前髪が可愛いこと。新居の私の部屋の家具はどうしようかとか。
お母さん、お母さんはいつもいつも私が一番で。愛情の海で私は溺れて窒息してしまいそうです。
お母さん、お母さんは今、何を考えてますか。何をしてる時が、一番楽しいですか。最近、自分の洋服を買いましたか。
お母さん。
春からは一緒に暮らすけど、私は、お母さんと、お母さんのことをたくさん話してみたいです。
たまには、お父さんに紅茶を入れてもらって、3人でおしゃべりしようね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます