カスタマーサービスセンター

「お電話ありがとうございます。お客様、本日はどのようなご用件でしょうか」


「あのよ、あれ。お前んとこの新しいランニングマシン、あれ不良品だわ。もう買ってから1ヶ月経ってんのに全く痩せねえの。どうしてくれるんだよ」


「それは大変失礼致しました。弊社で販売しておりますアスリートXのことで御座いますね。直ぐに新しい商品の発送と、返金の手続きを致します。合わせてお詫びの品を差し上げますので、これでご容赦頂けないでしょうか」


「お、おう。仕方ねえな。許してやるよ。じゃあ頼んだぜ」


「お客様、お待ち下さい!」


「あ?」


「他にはございませんでしょうか?」


「もうねえよ」


「では恐れながら、私からご提案させて頂きます」


「は?」


「先ほどの会話からお客様の傾向を分析致しました。商品名すら下調べしていない、ランニングマシンを買っただけで痩せるといった理不尽な要求などから、お客様は棚ぼた狙いの暇人「取り合えず恐喝タイプ」であるかと思われます。ここで有り余る時間を使って私の対応に対していちゃもんを付け、お詫びの品をさらに一つ獲得することをお奨めします」


「……」


「お客様、大変失礼致しました。私のカスタマイズがお気に召しませんでしたでしょうか。では、お客様は損得勘定も出来ない馬鹿だが、寂しさから電話したみた「かまってちゃんタイプ」である可能性があります。この場合お客様のダイエット歴に纏わる心底どうでも良いお話を展開することが宜しいかと思われます。お聞き致しましょうか?」


「あ、調子良くなったわ。今体重図ったら痩せてたし。てことで、もういいから。じゃあな」


「お客様、お客様ー。お待ち下さいお客様ー。……まただ。久しぶりのお電話だったのになあ」



 ―――お客様第一。カスタマーの真の要求をカスタマイズすることをモットーにしてから電話の数は激減した。オペレーターは欲求不満の状態が続いている。



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