お裾分け

ピンポーン。

チャイムが鳴る。

モニターを見るとお隣さんだ。

俺は高鳴る気持ちを押さえて玄関のドアを開けた。


「今晩は!どうかしましたか?」


「実はサラダ作りすぎちゃって。今日カレーでしょ?良かったら一緒に食べて。」


最近引っ越してきた彼女はセミロングの可愛い大学生。よくお裾分けをしてくれる。

料理の腕は折り紙付きだ。


「でもよくカレーって分かりましたね。」


「そんなの小学生でも分かるわよ。人参、玉ねぎ、じゃがいも買ってたらね。」


彼女は近くのスーパーでアルバイトをしている。そうか、見られていたのか。


「じゃあ、ありがたく!」


俺は少し豪華になったディナーを堪能した。



それから数ヶ月後。

お隣さんが再びやって来た。


「今晩は!今日は?」


「ふふっ。また作りすぎちゃって。今度はほうれん草のおひたし。晩御飯、肉じゃがでしょ?たべちゃって?」


本当に気の効く人だ。

もういっそ毎日味噌汁を作ってくれないだろうか。


「でもよく肉じゃがって分かりましたね。」


「そんなの小学生でも分かるわよ。人参、玉ねぎ、じゃがいも買ってたらね。」


そんなこと前にもあったな。

俺ははにかみながらお皿を受けとった。


「じゃあ、ありがたく!」


挨拶をしてドアを閉めようとする。

その瞬間、俺の中で一つの疑問が浮かんだ。


「でも、カレーの可能性もありますよね?」


すると彼女は無垢な笑顔でこう答えた。


「だって貴方の家、今ルーがないでしょ。」

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