異世界ですが魔物栽培しています。~ふたりの冒険者~

ファミ通文庫

01話 冒険者ミリア

「頼もー!」


 ボロ屋にて惰性を貪っていたオレに届いた、謎の声。

 恐る恐る扉を開けるとそこには冒険者っぽい格好をした一人の少女が立っていた。


「えーと……どちら様でしょうか?」


 年齢は恐らく14,5か。まだ幼さが残る顔と体型。

 活発で動きやすそうな服装は、うちによく遊びに来る少女騎士リリィに似ている。

 と、そんなことを考えていると、少女が腰に提げていた剣を抜き、切っ先をオレの方へと突き出す。


「って、ええっ!?」

「あなたがここで魔物を栽培しているという邪悪な魔術師ですね」


 魔術師!? なんだその噂!?


「ちょ、待ってくれよ! 確かに魔物は栽培してるけど、オレは悪いことなんて一つもしてな……」

「問答無用! あなたに奪われた憧れの先輩の仇をここで討ってやるー!」


 憧れの先輩!? 仇!? マジでなんのこっちゃ!?

 困惑の極みのまま呆然とするオレに、少女は剣を振り下ろそうとする。だが、突如その場に現れた何者かに足をすくわれた少女は、そのままバランスを崩し――地面に激突する。


「ぎゃふんっ!」


 おう。ぎゃふんっとか言いながら倒れる人、初めて見たぞ。

 すると、倒れた少女の背後にいた人物が、姿を見せた。


「アンタ、こんなとこでなにやってんのよ」


「リリィ!」

「先輩!」


 オレと少女の声が被った。


   ◇   ◇   ◇


「で、この子はいったい誰なんだ? リリィ」


 ひとまず少女をボロ屋の中に入れた後、リリィを加えて話を聞くことに。


「この子はミリア。まだ駆け出しの冒険者で、少し前までアタシが面倒を見ていた子よ」


 ほーん、なるほど。つまりは後輩ってことか。だから、リリィのことを先輩って呼んでたのか。


「で、なんでこいつにいきなり襲いかかったの」


 一方のミリアと呼ばれた子は反省したのか床に正座しながら、リリィへの問いかけにションボリした様子で応える。


「だって先輩、少し前までは私を引っ張ってくれてたのに……最近はギルドにも全然顔を出さなくなったし……」

「そりゃアンタも、冒険者としてもう一人前になった頃だし、アタシの協力がなくても依頼くらい出来るでしょう?」


 リリィからの最もな返答に対し、しかしミリアは「う~っ」と唸りながら返す。


「でもそれだけじゃないもん! 先輩最近、町外れの魔物を栽培してる怪しい人の所に出入りしてるって話だし! 私、その人に先輩が洗脳されたって心配したんですよ!」


 それってひょっとしなくてもオレのことだろうか。

 リリィと一緒に顔を見合わせた後、お互い笑みをこぼす。


「馬鹿ね~、そんなわけないでしょう。確かにこいつは魔物を栽培しているけれど、危険でも怪しい奴でもないわよ。ついでに洗脳なんかもされてないから」


 むしろ、そんなの出来ません。と一応ハッキリ答えておきました。

 そうは言うものの、こちらを見るミリアの視線は未だ疑いに満ちていた。


「……じゃあ、なんで先輩はその人の所にばっかり行っているんですか?」

「え? そ、そりゃあ、こいつの所にいると魔物が楽に手に入る……から」


 と最後の方は小声でボソボソと呟く。

 こいつ、そんなことを考えていたのか……!

 しかし、ミリアと呼ばれた子が、それをまっすぐ否定してくる。


「先輩がそんな楽して魔物を手に入れるような人だとは思えません。きっと何か事情があるに違いありません!」


 それを聞き、リリィの視線が気まずそうに明後日を見ている。

 うーん、後輩から慕われるというのもこれはこれで面倒だな。


「先輩はこいつがなんらかの悪の手先だということを知って、その内部事情を知るためにわざと懐に入り込んでいるんでしょう! そういうミッションなんでしょう! それなら及ばずながら私も先輩の力になります!」

「だーもー! 違うってば! アタシとこいつはパートナー! 相棒なの!」


 ミリアからの言及に、遂に限界が来たのかそう叫ぶリリィ。

 しかし、それを聞くや否やミリアが目の前で固まるのが見える。


「ぱ、パートナー……? あ、相棒……? せ、先輩とその人が……?」


 まるで好きな人に実は恋人がいましたーみたいな衝撃を顔に浮かべるミリア。

 そんなに驚くことなのか? と問いかけようとするが。


「せ、先輩は今まで複数のパーティに参加したことはあっても、誰か一人と相棒を組んだことはなかったはずなのに……! いつか私が先輩と同じくらいに強くなったら先輩の相棒になろうと思っていたのに、それが、それが……」


「ち、ちょっとミリア。アンタなに言ってんのよ。いくらなんでもちょっと大げさじゃ……」


「先輩、その人のことが好きになったんですかー!?」


「なっ!?!?」

「ぶっ――――!!」


 ミリアのその叫びに思わず咳き込む。

 ちなみに隣では顔を真っ赤にしたリリィが「なななな、何言ってのよ! アアアアンタ、アタシの話聞いてたの!?」とすごいドモってる。


「そ、そんな……冒険者の間では可憐だけど勝気。勝気だけどお世話好き。親切で優しいけれど、男っ気がまるでなかった先輩に男が出来るなんて……!」

「だからアンタ、アタシの話聞きなさいよ!?」


 もうすっかり自分の世界に入っているのか、リリィの言葉をまったく聞いていないミリア。

 やがて、何かを決意したかのようにキッとこちらを振り向き、ビシッと指を立てて宣言してくる。



「今回は一旦退却させてもらいますけど、あなたがリリィ先輩の男だなんて私は認めませんからね! いずれ来るべき勝負を挑ませてもらいますよ!」



 そんな熱い発言を残しつつ、ミリアと呼ばれた女の子はボロ屋から出ていき、オレとリリィはポカーンとした様子でそこに座っていた。

 そんなオレ達の目の前をカボチャの魔物であるジャックがコロコロと転がってきて一言呟く。


「なんだ、やっぱ兄ちゃんと嬢ちゃんは付き合っていたのか」


「ち、ちげえよ!!」

「ち、違うわよ!!」


 オレたちは、息ピッタリにツッコむのであった。


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