魔導入門書《まどうしょにゅうもん》[法術用語]

 本書は、日本王国立魔導院で監修された法術に関する総括的な解説を行う入門書である。

 魔力や法術などの概要について学べるようにしてある。




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■魔力とは

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 太古の昔、魔神から授かったという超常的力。

 ただし、この力が表に出てきたのは、1860年代(江戸時代末期)。

 この世界の全人類にその力を使える魔因子があるが、使用には魔法・魔術といった技法が必要となる。

 ただし、人により魔因子の所持量が異なり、それによって使える魔力量も異なっている。




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■法術

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 法術は、魔力を扱うための技術である。

 大きく魔法と魔術にわけられる。



●魔法

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 基本四属性の魔因子に意志を直接働きかけて、魔力法則を扱う法術。

 基本四属性の具現化がメインだが、魔力探知、魔力障壁もこれに含まれる。

 力をそのまま振りまわしているようなもので、複雑なことはできないが、発動は早い。

 基本的には戦闘用に特化しており、戦術型、戦略型のタイプがある。



●魔術

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 魔法を組み合わせて行う複雑な法術。

 基本四属性の他に拡張十属性の具現化、回復魔術、結界魔術、転移魔術など多岐に渡る力を発揮できる。

 魔法よりも複雑なため、基本的に発動まで時間がかかる。


 単純に魔術を使うものを【魔術師】、さらにその中でも高等な術を使用でき、国の認定を受けた者を【魔導師】と呼ぶ。

 ただし、都市部以外でのこの呼び分けは、あいまいにされることが多い。

 正式な魔導師の資格は、都市部ではないと取得できず、勝手に魔導師を名乗る者が多いためである。



●召喚魔術

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 魔物を呼ぶ古代魔術の一種。

 古代魔術とは、他の魔術とまったく系統が異なり、その研究さえも日本王国法で禁止されている法術である。

 ただし、ゴーレム召喚術だけは正式に認められており、魔導院から情報が開示されている。だが、もっぱらこれは魔生機甲レムロイドの召喚術として使用されている。

 魔獣等も召喚できるが、それは禁止されている。


 ちなみに魔生機甲レムロイドを呼び出す【構築ビルドの儀式】などは、この召喚魔術の一環ではあるが、古代魔術自体は魔生機甲設計書ビルモアが行っており、構築ビルドする者は魔力の供給と始動を行っているだけである。つまり、パイロットは古代魔術どころか、魔術さえ使える必要はない。




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■基本四属性

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 火風水地の力の要素を持つ魔因子と呼ばれる、魔力の根源。

 魔法で扱われるのは、この基本四属性のみである。




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■拡張十属性

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 基本四属性のから生み出された魔因子。

 魔術で扱われる属性である。



●光

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 光・浄化などの魔因子。

 これをコントロールすることで、明かりや呪いに対する浄化の力などを扱える。



●転

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 加速・転移の魔因子。

 これをコントロールすることで、通常では考えられない高速移動や究極的には転移の力を扱える。



●精

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 生命に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、回復や究極的には生誕の力を扱える。



●空

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 浮遊・重力に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、飛行・重力の力を扱える。



●幻

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 幻に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、生物の感覚を惑わす力を扱える。



●心

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 心理に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、相手の心を操ったり読心する力を扱える。



●雷

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 雷に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、雷を操る力を扱える。



●闇

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 呪に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、呪いの力を扱える。



●氷

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 冷気に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、冷気を操る力を扱える。



●結

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 結界に関する魔因子。

 これをコントロールすることで、結界を操る力を扱える。




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■属性魔方陣

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 魔力には、基本四属性と拡張十属性がある。

 それは下記の魔方陣で表される。


|基本属性__|_火_|_風_|_水_|_地_|_

|火/熱陽__|_光_|_幻_|_精_|_空_|拡|

|風/動変__|_幻_|_転_|_心_|_雷_|張|

|水/冷陰__|_精_|_心_|_闇_|_氷_|属|

|地/静同__|_空_|_雷_|_氷_|_結_|性|

※/の後ろは属性の性質。


 縦横の基本四属性の組合せで、拡張属性が作られる。

 さらにその拡張属性は、魔方陣上の上下左右にある属性が影響力を及ぼすことを表している。




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■呪文

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 呪文は、魔法と魔術でまったく異なる構造をしている。



●魔法呪文

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 基本的に、魔力をこめて魔法名(漢字)を脳裏に思い浮かべ、唱えるだけで成立する。

 根源は魔因子に働きかける意志の力であり、熟練した使い手ならば、魔法名(漢字=魔法陣)を脳裏に思い浮かべるだけで無詠唱も可能。

 ただし、呪文を唱えることで魔因子の働きはよくなる。



●魔術呪文

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 魔術式から構成される。

 呪文の具体的な文章に関しては流派により異なるが、基本的な術式は一緒である。




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■魔法呪文

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 魔法呪文は、2つのタイプと3つのクラスの組合せで作られる。

 たとえば、石の矢を敵に放つ魔法の正式名称は「戦術三級魔法【石鏃】」という。



タイプ

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 タイプは、下記の2種類がある。


・戦術型:基本的に目の前の敵(個人から数人)を対象にした魔法。

・戦略型:複数人で複合詠唱し、効果範囲を広げた魔法。




クラス

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 級により呪文(魔法名)の長さが決まる。


・三級:漢字2文字で構成。単純な具現化物を相手にぶつけるような魔法。動きも単純にしか操作できない。

 漢字は、基本的に「物質名1文字」+「形状1文字」で構成される。


例:火の玉→「火弾」


・二級:漢字4文字で構成。三級に「強化」の要素が加えられる。効果として、サイズの拡大、威力の増大などがある。

 漢字は、基本的に三級に強化したイメージが付加されたものとなる。


例:三級【石鏃】→二級【岩石大矢】

  三級【火弾】→二級【火炎巨弾】


・一級:漢字6文字で構成。二級に「変化」の要素が加えられる。効果としては、爆発や拡散、形状変化、軌道変更などが含まれる。

 漢字は、二級の頭に変化要素が追加される。


例:二級【岩石大矢】→一級【天降岩石大矢】

  二級【火炎巨弾】→一級【爆散火炎巨弾】


・禁忌級:漢字10文字で構成。詳細不明。基本的に使用されないため、級は3つとされている。




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■魔術呪文(魔術式)

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 属性魔方陣の構成から魔術式というものが作られ、そこから呪文が生成される。

 その生成方法により、小呪、中呪、大呪の3つが存在する。



●小呪

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 例えば、魔術式で「闇」を見ると――


「闇」=「水(陰)」+「水(陰)」


――で生じている。

 ここから主流である魔導院流で呪文を読むと――


「陰より生じて陰に潜む闇」


――という小呪が出来上がる。

 その後に1文の願いを続ける。


例:小呪【深淵呪殺】の場合(魔導院流)

「陰より生じて陰に潜むは闇。の力もちて怨敵の命を奪え!」



●中呪

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 小呪よりも威力が上がるが、呪文も複雑化する。


 たとえば「闇」の場合、魔方陣の上下左右を読み取ると――


「『心』を『氷』にすることで生じる」


――と読める。

 さらにこれを魔術式で展開すると――


「心」=「水(陰=見えない部分)+風(動き)」


――となり、また――


「氷」=「水(冷たさ)+地(静止)」


――となり、つまり――


「闇」=「心+氷」=「水(陰)+風(動)+水(冷)+地(静)」


――という魔術式ができあがる。

闇の場合は、この「心+氷」という魔術式が2つあり、ここから生成される中呪は以下の通り。


例:中呪【失神滅殺】(魔導院流)

「不可視の動きとて冷たく静める闇。不可視の動きとて冷たく静める闇。の力もちて怨敵の命を滅せよ!」



●大呪

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 大呪は、小呪+中呪で構成される。


 たとえば、「空」の場合、まず基本四属性から――


「『火(陽=太陽)』と『地』に挟まれた場所」


――と読みとける。

 すなわち小呪(魔導院流)は――


「太陽と大地の狭間の空」


――となる。

 今度は、上下左右から中呪を見ると――


「『雷』が『地』に向かって落ち、『精(命)』の『火』(=太陽)がある場所」


――と読める。

 ここから魔術式を解くと――


「空」=「雷」+「地」+「精」+「火」

   =「風(動)」+「地(静)」+「地(静)」+「水(陰)」+「火(陽)」+「火(陽)」


――となる。

 この場合、中呪(魔導院流)は――


「渡る風と大地の間、遠地よりいでし陰陽の灯を掲げる空」


――と読む。

 大呪は、小呪と中呪を合わせるので、たとえば以下のようになる。


例:大呪【浮身上天】

「太陽と大地の狭間、渡る風と大地の間、遠地よりいでし陰陽の灯を掲げる空。の力もちて天空に舞わせ!」


 呪文の文章は流派だけでなく、使う魔術によっても変わることがある。

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