知力カンストの俺は異世界で教師になりました
@DateRan
第1話 始まりはギルドから
ふと目を覚ますと周りには何もないが不思議と神秘的な場所で俺は椅子に座っていた。
頭がいたい。自分が何をしていたのか思い出せない。ていうかここどこだ!?
俺がいろいろな意味で頭を抱えていると
「うお!?まぶしっ!」
突然目の前に直視できないほど眩い光があらわれた。その光のなかには一人の女性が立っていた。
そして……
「初めまして伊達優真さん。残念ながらあなたの人生は終わってしまいました……」
と悲しそうにそう告げた。
金色の髪と目に透き通るような白い肌、そして、とても神秘的な雰囲気を出す彼女は神様か天使のようだ。
俺が呆気にとられていると
「私の名前はイリアです。この展開で光の女神というものをやっています。あなたはついさっき、交通事故で亡くなってしまいました……」
......今何て言った?俺は死んでしまったのか?そうだ、思い出してきた。
俺は大学の合格発表の帰りに合格した喜びのあまり赤信号に気づかず車に跳ねられたんだった......
遠足は帰るまでとはよくいったもんだ。
「思い出しましたか?」
「……はい、思い出しました……」
正直死んだことに実感を持てない。
でも……親友や家族ともう会えない、自分の夢だった「教師になる」ことが叶わないと考えると涙がでてきた。
「あの……大丈夫、じゃないですよね」
イリアさんが心配そうに気を使ってくれて自分が涙を流していることに気がつく。
「……俺は、死んでしまったんですか?」
「……はい」
「……俺は、もう友達とも家族とも会えないんですか?」
「…………はい」
そうか、もう会えないのか。
心の中でみんなに「ありがとう」と「ごめん」とつぶやく。
ただ、自分の死がみんなの枷にならないことを俺は祈ることしかできなかった。
「……じゃあ教師という夢も、もう諦めないといけませんね」
「いいえ!!それはまだ早いです!!」
イリアさんが急に自分の顔の前にやってくる。
って、近い近い!!
「そ、それで、教師を諦めるのが早いというのは?」
「はい!今伊達さんには二つの選択肢があります。一つは生まれ変わって赤ちゃんからやり直すこと。もう一つは記憶や身体、精神をそのままにして生まれ変わることです。ただし、あなたが元いた世界以外という制約になります。」
「つまり、生まれ直すか別の世界に行くか、ということですか?」
「はい、そのような認識で結構です」
……そんなの決まっている。このまま自分の人生は何もいいことありませんでした、と諦めるより……
「じゃあ、二つ目の別の世界に行くことでお願いします!!」
可能性にかけたほうが何倍もいいに決まっている!!
「了解しました。では、あなたが行く世界のことについて少しお話ししましょう。何の情報もなかったらさぞ大変でしょうしね」
そういうとイリアさんは笑顔を向けてくる。……ヤバイ、かなりドキッとした
「あ、はい!お願いします!」
「まず、そうですね~伊達さんはゲームとかアニメとか好きですか?」
「え?あっ、まあそこそこですけど……」
「じゃあ異世界というとどんなことを想像しますか?」
「んーーゲームとかだとゴブリンとかスライムとかがでてくるファンタジーな世界?でしょうか」
「ええ、おっしゃる通りです。あなたが行く世界はそんなモンスターが住んでいる少し危険な世界です。日本と比べて平和とはあまり言えませんね。」
「なるほど。ゲームから考えると、そのモンスターを倒したり、そのための武器を作ったりしてお金を稼いで生活する……みたいな感じですか?」
「まあそんなところですね、飲み込みが早くて助かります。」
ゲームは王道ものをよくやっていたから何となくわかる。でもそれじゃあ……
「……教師なんてなれるんですか?」
今の話だとほとんど冒険者や職人として生きていくしかないと言っているようなものなんだが……
「ご安心を。この世界にも教師というものがあります。ただ、日本とは少し変わっていますが……」
まあ、異世界だから多少は違うんだろう。
「……何となく分かりました。じゃあ、もうお願いしていいですか?」
「え?他に何か聞かなくていいんですか!?」
「はい、百聞は一見に如かず、早く見たいんですよ!その世界に!!それに……ここにいるとどうしてもみんなのことが頭から離れられなくて……申し訳ないというか何というか……」
何も行動していないと自然と嫌なことだけ頭によぎる。自分には仲のいい友人もいたし家族とも仲が良かった。
それなのに何も言えずに別れてしまったことが心残りで悔しい。言い方を変えれば、早くこの場所から逃げ出したい。
「そうですか……じゃあ転生前に一つサービスをしましょう」
「サービス?」
ラノベとかだとよくあるチート能力でもくれるのかな?
イリアさんが手を広げる。すると紙とペンがあらわれた。
「遺書……ではないですがこの紙に残してきた人たちに何か書いてあげて下さい。私が届けてきてあげますよ」
「え!?そんなことできるんですか!!」
「はい、さしずめ天国からの手紙と言ったところでしょうか?」
それは……どんなものより一番欲しいものだった。
「よし!これでいいかな……」
小一時間ほどみんなについて書いてた。途中何回も思い出しては泣いてと繰り返しながらも書き終わった。
「では、あなたを送った後、この手紙を届けますね」
「はい!ありがとうございます!!……これで思い残すことはありません」
「そうですか、それは良かったですね!」
イリアさんがまた輝くような笑顔を見せてくれる。……不覚にもまたドキッとしてしまった。
「あ!後この紙と、少しですがこの世界のお金を」
俺は折りたたんである紙とお金の入った小袋を受け取った。
「この紙は?」
「ふふ、着いたら読んでくださいね!」
「……もしかしてラブレターとか?」
「なななな!!ち、違いますよーー!!!」
女神様は照れている姿も可愛らしい
「もう!……では始めます。」
イリアさんがそういうと俺が座っている椅子の下に魔法人がでてくる。そして光があらわれて俺を包むように纏う。
「では伊達優真さん!良い人生を!!」
みんなに対する後ろめたさも手紙を書いてだいぶ無くなった。
さあ!待っていろよーー!俺の異世界教師ライフ!!
またまた目を覚ますとそこは日本とは全く違う見知らぬ土地で俺は立っていた。
「ここが……異世界なのか」
自分が本当に異世界にいるのか実感がまだ持てていないが、目の前の木やレンガの家、道脇に八百屋のような店があり、まるで中世にきたかのような雰囲気だった。
しかし、賑わう雰囲気の中、明らかに服ではなく装備と呼ぶにはふさわしい人もいる。
……どうやら本当に異世界にきたようだ。
「そうだ!たしかイリアさんから何か紙をもらったような……」
と服のポケットを弄って中にはさっきもらった紙とお金を取り出す。
「なになに?『イリアの初心者異世界ライフについて』だと?ええーと」
その中に書いてあることをまとめると、どうやら俺はアーリアという町にいるらしい。
まず俺はギルドというところで自分の戸籍のようなもの、ギルドカードというものを作り、自分のステータスを確認する。基本はそのステータスにあった職に就くらしい。
冒険者なんかは筋力や走力が高い、また知力とMP(マジックポイント)が高いと剣士や魔法使いになりやすいそうだ。
教師に向いている人のステータスは知力と……筋力?冒険者向けの教師……ってことなのかな?
「まっ、とりあえずギルドに行ってみるか」
ご丁寧にイリアさんから貰った紙に地図が書いてあったので迷うことはなかった。
「おーーーーすごいな……」
ギルドの前に来るとかなりでかい建物だとわかった。この中でギルドカードを手に入れるんだよな。
「う、結構緊張するなーー」
この緊張は受験の時の面接に入る前に似ている気がする……
深呼吸して落ち着いてーー
「何かお困りですか?」
「うおっ!?」
突然背後から声をかけられて変な声を上げてしまった。
「い、いいえ!あ、怪しいものじゃなくてですね!その、ここの……」
「クス、敬語じゃなくて大丈夫ですよ。新しく登録される方ですよね?あ、私はマリンというものです。」
どうやら俺のことを不審者とは思ってないらしい。見たところマリンは10歳くらいの女の子に見える。黒髪が似合うとても可愛い子だ。
「あ、うん、そうなんだよ。ここに登録しないと生きていけないぞーーで言われてね。でもなんか変に緊張しちゃって……あ、俺の名前はユウマっていうんだ」
「ユウマさんですか!いい名前ですね!」
「そうかな?ありがとう、マリンもとっても可愛くていい名前だと思うよ」
「そ、そうですか?そんなこと言われたの初めてですよ」
マリンは顔を赤くして照れてもじもじしている。でもすぐにはっとして俺の顔を見る。
「ユウマさんはここにくるのは初めてなんですよね?どこか遠いとこからきたのですか?」
「ああ、かなり遠くの遠くの場所からね」
まさか日本なんて言ってもわかるわけないし、これからも田舎ということにしておこう。
「そうなんですかーーまま、立ち話もなんですしギルドに入りましょう!!」
「おっ、おう」
マリンに手を引っ張られてようやく俺はギルドに入ることができた。
……ちょっと情けないな
「おーーすっげぇなーー」
ギルドの中にはたくさんの人がいてみんなお酒を飲んだり、クエストの話をしているようだった。なんかこういう雰囲気は新鮮で楽しい。
「ここが登録所なんだけど……ユウマさんメルト持ってる?」
「メルト?ああ、お金のことか?」
イリアさんから貰った紙に書いてあったな。このメルトっていうお金はだいたい日本と同じくらいの価値を持つと思っていいらしい。
「ええっと、だいたい1万メルトぐらいかな?」
「あっ!それなら大丈夫だよ。手数料がかかるんだけど3千メルトだから足りるね!じゃあいこーう!!」
良かった。ここで足りなくて詰むとかなくて……
「初めまして、初めて登録される方ですか?」
「はい、ダテ ユウマと申します」
「では、ダテさん。まずは手数料として3千メルト必要なのですがありますか?」
「はい、ここに」
とお金を渡す。どうやらちゃんとたりたようだ。
「はい、確かにいただきました。では早速ギルドカードを作りましょう!」
「わかりました、お願いします!」
そういうと俺の下に魔法陣が現れる。
数分待つと
「はい!お疲れ様です。出来上がりました!見てみてください」
「はや!?どれどれ?」
「私にも見せてよーー」
「ほれ、基準がわからないからどんなもんか見てくれよ」
マリンと一緒にギルドカードを見ると知力の数字が3桁で高そうだがそれ以外はどうなんだ?
「マリン?これどう思う?」
マリンの方を見るとなんか笑いをこらえているように見える。
「……おい、どうした?」
「い、いえ!ただ、そのーー頑張ってください!」
「えーー!?なんだよその感じ?もっとはっきりしてくれよ」
「……いいんですか?怒らないでくださいよ?」
「うん、大丈夫大丈夫」
「では私からの評価ですが……まず、筋力や走力なんかの冒険者の基本ステータスが平均値どころか12歳の私の半分以下で相当やばいってことと、なぜか知力がカンストするくらい高いのにMPがこれまた低いっていうのがおもしろ……いや不思議で、はい。はっきり言ってゴミですね」
「ご、ゴミーーーー?!」
想像以上に馬鹿にされた!
「くそ!お前のも見せてみろ!」
「ど、どうぞ」
どれどれ、俺のと比較すると…………
「知力以外まけてんじゃねーーーーーーーーーかーーーーー!!!!」
ここまで差が出るとは……
「言っておきますけど私はこれでもかなり低い方ですよ?ユウマさん相当ひ弱ですね……」
「もうやめて、引きこもって勉強とゲームしかしてこなかったんです……」
くそーー、もう少し筋トレとかやってれば良かったな……
「ま、まぁでも?俺はこの町で教師になることが夢だし?筋力とかどーーーーーーでもいいし?むしろ知力が高くて、マジ感謝って感じだわーー!!」
「えっ?教師ですか?あれ?でも確か教師になるためには……」
「とりあえずありがと!教えてくれて、少ないがお礼だ。じゃ、またどこかで会えたらなーー!!」
そう言って俺は逃げるようにギルドを出た。
「あっユウマさん!ギルドカード忘れてますよーーーー!!」
そして、戻ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます