2532年
ナトリウム
1
「いらっしゃい....やぁ君か。」
私はラヴィニア通りに面したこの小さな商店をよく訪れる。
「死んでしまったものでね。」
「だろうさ。」
彼、レイモンドは別段驚いた顔もせず、淡々と言った。
「ジャンク品だと言ったろうに。壊れてしまうのは当たり前だ。」
「壊れたのではない。死んだのだ。」
「そうかい。」
彼は”あれ”つまり商品を人扱いしない。この地に住む者皆そうだ。
”あれ”を人と、命と認めない。
「アラン、お前さんももの好きだね。あんなガラクタを欲しがるなんて。まぁこっちもおかげで儲かっている訳なんだがな。」
レイモンドは老けている。性格な年齢は知らないが長いこと生きているだろう。昔から白髭を伸ばししわしわの顔を更にしわしわにしながら私に小言を言う。
ぶつぶつと文句を言われながらも新しい者を手に入れた。早く遊びたくて仕方がない。新しい玩具を買ってもらった子どものように帰路を急いだ。
「アラン、お前は異常だな。」
レイモンドはそう呟くと店の奥に消えて行った。
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