ゆのV.Sボディークリーム

ゆのは女子力がほしかった。

女子力を手に入れるには、手元にあるこのボディークリームを体に塗りたくらねばいけない(気がしている)。

しかーし!ゆのはこのボディークリームを、敵としてしか見ていなかったのだ。


フタを開けた瞬間に香ってくる、いや、あまったるいいちご臭。薄く体にのばして時間が経つと、それはなんとも「オンナノコラシイ」ほのかに甘い香りがするのだが、つけた瞬間はとてもそんな生半可なものではない。濃ゆい濃ゆいいちごの固まりを鼻にぶつけられたかのような匂いだ。言葉では表せない。


ふと、パッケージをよく見てみるゆの。敵のことは、よく知っていたほうが有利になる。

ほう、このいちご500倍に濃縮した香りにも名前がついているのか。どれどれ........

ファ、ファンタスティックベリー!


(google辞書で調べてみた。

ファンタスティックとは、すばらしい様。または、幻想的で、夢を見ている様。)


フッ、そういうことか。

この匂いのせいで、鼻や各種器官に異常をきたし、幻覚を見てしまうということだな。なるほどなるほど。こいつは危険だ。

だがしかし、開けないわけには行かないのだ。

ボディークリームをもったゆのの手に緊張がはしる。


ぱかっ!


…あああああ!!!

まずはこの強烈な濃縮いちご臭との戦いだ。

しかしゆのは負けじとボディークリームを手にとり、腕や脚へと塗り始めた!

いいぞ。この調子で全部……

そう思い、ゆのは完全に油断してしまっていた。

右のかかとに塗り終え、次は左だと右足を地面につけてしまったとき。


ガタン!(ゆのは足をすべらせて)

ゴン!(手を壁についたものの)

ガタガタ!(近くにあった洗濯カゴにつまづき)

ガタゴトゴトン!


………憎き敵に、洗濯カゴの中にすっぽりと入れられてしまったのだ。


ゆのがその時思ったこと。

女子力は、無理して手に入れようとしちゃ、ダメなんだなあ。


ゆのとボディークリームとの戦いは続く。(?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る