それでも手を繋いでいてくれますか?

@takumi_naka

その日


その日は暑い夏の日だった。


僕は30歳の公務員の妻子持ちの平凡な男である

今までの人生を振り返ってみても特に良い事もなく

懸賞さえも当たった事すら無い。

人に自慢出来る特技もなく、顔もまあまあだ。

ただ公務員試験に通った事と「妻」と出会った事は良い事だと思いたい。


いや、違う


「僕」と出会った事は「妻」にとっては間違った選択だったはずである。

何故ならそれは、 それは・・・


「はい、では目を閉じてゆっくり深呼吸して下さい」


・・・

・・・


意識が朦朧とするなかで僕は考えた


ああ、今日、いってきますぐらいは伝えておくべきだった。


深呼吸をして目を閉じた。

新しい世界へと旅立ち、間違いを正す為。


「大丈夫だよ、だってどんな事があっても

あなたは私と手を繋ぎ続けて生きてくれるんだもん」


眠る前、胸に詰まった重りが僕を締め付けた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る