無題の異世界冒険譚。

渡樫しょこら

第1話 記憶

 


 蝋燭のほのかな 光に照らされた一室。

 まだ眠たくないよと訴える少年の頭を彼女は愛おしげに撫でた。




「それなら、遠い昔の遠い世界のお話をしましょう」




 そう言うと彼女は目を瞑り、淡々と、紡ぐように、歌うように、思い出すように語り出した。




「それはある日のことです―」




 まるで見ていたかのように話す彼女の今の名前はシュトラウス・エリスシュルシュ。今はエリとしか名乗らない。

英雄達のことを最も近くで見ていた人だ。


 

 寝静まった街の宿屋の一室で、蝋燭の明かりに映し出された二つの影がゆらりと揺れた。






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