6月 7日(水) 雨

西の外れにあるバカでかい罠の木で会談は行われた。

生憎の雨で、早々に「駅」の中に入る。

隣の群れの奴等は泡を喰っていたが、私等にとってはそれ罠の木を開けるということはもう既に日常茶飯事だ。


あまり言葉を交わすような間柄ではないので緊張感が漂う。

隣の群れのボスは真っ黒な大猫で、名を紫堂しどうという。

私よりも年嵩で大柄なので威圧感もあるが、何、ビビることはない。

私は胸を張って彼を迎えた。


罠の木の開け方を聞きたいということだった。

いったい何処から聞きつけてきたのか。

訊ねるよりも先にこちらが見せつけてしまったので、大層驚いたようだ。

それにしても、会談の場を駅にしておいたのは幸いだった。

開く場所もたくさんあるので、ひとつずつ開け方を教えてやった。

別に、隠すようなことでもないからな。


奴は何度も礼を言って帰っていった。

役に立ったのなら何よりだと思う。

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