第四話

第247話 傷心者と小心者01


「一……義……!」


 止めろ!


 何時も見る夢だった。


 マジカルカウンター。


 恐怖の象徴。


 大鬼が月子を殺す。


 上半身と下半身が離れる。


「うわあああああああああっ!」


 絶叫。


 自身のソレだ。


 一義は反射的に起き上がる。


「ご主人様!」


「お兄ちゃん!」


「旦那様!」


 かしまし娘が抱きついた。


「死んだ……月子が……また……」


「夢ですよ」


「だよ!」


「落ち着いて。深呼吸」


 ズキンと頭が痛む。


 過度のストレスが人体に影響を及ぼしていた。


 四人は一つの寝部屋にいた。


 木造建築とい草の床。


 畳……そう呼ばれる文化だ。


 一義はエルフだ。


 その美貌もさることながら、人類と様子を乖離している。


 亜人。


 東夷。


 そう呼ばれている。


 白い髪に白い瞳。


 これだけならアルビノで済む。


 一番の特徴は浅黒い肌だろう。


 エルフの持つ忌避される要因。


 その少年にかしまし娘が抱きついていた。


 一人は姫々。


 銀髪銀眼のメイドさん。


 今は寝間着だが。


 モデル体型の美少女で、家事全般を得意とする。


 一人は音々。


 黒髪黒眼の幼女。


 スットントンの体つきだが、年齢設定は一義に順ずる。


 魔術に並々ならぬ才幹を持ち、特に防御については超の付く一流。


 一人は花々。


 赤髪赤眼の鬼。


 オーガと呼ばれる亜人。


 額から角が生えており、ソレさえ除けば美少女で通る。


 引き締まった肉体にセックスシンボルが強調される。


 かしまし娘。


 それぞれに美少女だった。


 そしてこの三人だけが、一義と過去を共有している。


 月子。


 灰かぶりの姫。


 護衛対象である彼女を失ってから一義は壊れた。


 見る夢全てが月子の最後。


 そして時に起きているときもフラッシュバックで思い出す。


 かしまし娘はその対策だ。


 自らのマジックキャパシティの大部分を使って具現した美少女。


 彼女らが居るから一義はまだ自殺を押し留めている。


「月子……月子……」


「大丈夫ですよ。大丈夫なんです」


「お兄ちゃんには私たちが居るから」


「そうだ。大丈夫だ旦那様」


 かしまし娘がギュッと抱きしめる。


「茶を淹れましょう。落ち着きますよ」


「ありがとう姫々」


「ご主人様のためですもの」


 ニコッと姫々は笑った。


「苦労」


 だとか、


「面倒」


 だとか、そんな感情が一切無い。


 本当に、


「ただご主人様ありき」


 な姫々だった。


「むぅ」


 と音々。


「だね」


 と花々。


「コレに関しては譲れません」


 苦笑して姫々は答えるのだった。


 そんなわけで一義とかしまし娘。


 四人で夜のお茶会となる。

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