第184話 いざ鉄の国07


 あらかた必要事項を伝えて今回の一義とルイズの邂逅は終わりを見せた。


 宿舎の改装は終わっていない。


 であるためホテル暮らしだ。


 姫々とアイリーンが厨房を借りて東方料理を作った。


 今日は炊き込み御飯に冷奴とおから……それから味噌汁。


「とりあえずソレらを習得したらまた顔を出して」


 一義はそう言う。


 面倒見が良いのか人が良いのかはこの際論じない。


「その件なんだけど」


 とはルイズ。


「師匠?」


「何でっしゃろ?」


「鉄の国に招待したいかな」


 ハーレムの女の子たちが噴飯した。


「駄目に決まっています……」


「駄目だよ!」


「却下だね」


「有り得ません」


「不許可ですわ」


「そなの?」


「…………!」


 フェイ以外が猛反対。


 さもあろうが。


「別段……」


 とルイズ。


「鉄の国に骨を埋めろとは申さないよ」


 サックリ言ってのける。


「ただまぁ鉄の国が師匠を見極めたいのは事実だけど」


「それは皇帝が?」


「というより王女殿下が、かな?」


「王女……」


 姫々は思案した。


 それは他の女子も同じだろう。


「鉄の国には三人の王女殿下がいらっしゃるのよ」


「マリア」


「ナタリア」


「オリヴィア」


 サクッと返すかしまし娘。


「うん」


 とルイズ。


「お三方とも一義に興味を示しているみたいで」


「僕なんかに?」


「いやいや」


 冷や汗をかくルイズだった。


 それは他の女の子も同様だ。


「ご主人様は自分を卑下しすぎます……」


「お兄ちゃんは規格外だよ!」


「音々の言葉に一定の理があるね」


「状況の把握は正解への第一歩」


「というかわたくしを下したんですのよ?」


「謙遜と言うより皮肉ですね」


「…………!」


 散々な言われようであった。


 一義としても、


「心当たりが無い」


 わけでもないが。


「僕ねぇ……」


 味噌汁をすする。


「とりあえず観光旅行気分で顔を出してはみないかな?」


 ルイズが言う。


「僕にメリットは?」


「皇立魔法学院への無条件参加」


「行く」


 即決だった。


「「一義!」」


 憤慨したのはアイリーンとビアンカ。


「鉄の国に帰順するつもりですか!」


「敵対しますの!?」


「そこまで大事じゃないよ?」


 さも平然と一義。


「心はこっちに置いていくから」


 それは嘘偽りの無い言葉。


「あう……」


「むむ……」


 アイリーンとビアンカも押し黙るしかなかった。


「じゃあ決まりだね」


 ルイズが朗らかに笑った。


「とりあえず明日馬車に乗って鉄の国を目指そ?」


「まぁ異文化を知る良い機会だね」


 味噌汁をズズズ。


「本気ですかご主人様……」


「本気なのお兄ちゃん?」


「本気なのかい旦那様」


「別段気負うことも無いでしょ」


 一義は別段鉄の国に脅威を覚えていなかった。


 もっているカードが初めから違いすぎるのだ。


 正直なところ一国を相手にして下せる能力を一義は持っている。


「それはかしまし娘の知るところでしょ?」


「そうですけど……」


「そうなんだけど!」


「そうではあるけど」


 つまりそう言うことだった。


「話が決まった……でいいのかな?」


「構わないよ」


 一義が首を縦に振る。


「とりあえず招待されましょう」


 特に警戒を覚えないのも一義の能力の内だ。

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