第43話「はい、論破」

「そういえば最近肉を食べていないのです……」

 まーちゃん係と呼ばれるお姉さんにもたれかかりながら不意にこぼしてしまった一言がきっかけでした。


「マイルズよ、我らてっきり貴様肉を食べぬ主義だと思っておったぞ」

 ポチの言葉です。


「お肉大好物ですよ?」

「お主、来た日から野菜と魚ばかり話しておろう、料理長も気をつかっておったぞ?」

 ん~~~~、なんてこった!!

 お魚戦線ばかり気を取られていましたなんて迂闊な…。


「ですが……本日お肉な気分なのです! 今日はお肉たべたいのです!! お肉なのです! ひき肉つかってハンバーグが良いのです! とろーりチーズINがいいのです! スープはコーンスープが良いのです! 何より調味料がいっぱい見つかったのです!」

 ここは学院のホール。沢山の生徒がいる中で幼児必殺の駄々っ子タイム!


「おにくーーーなの!」

 といつもの様に背中を中心に暴れようとした所、権三郎に抱え上げられます。


「参りましょう。そろそろ『そう』言われると思いまして王家御用達の店を調査済みです」

 ゆっ優秀過ぎませんか権三郎!


「あらたな調味料や器具をご所望でしょうか?そちらも手配可能です」

 そう言って私を降ろすとスッと一礼する有能執事。

 遠慮なく色々と注文しました。


「では、学校が終わりましたら肉屋へ向かうと通達いたします」

「お願いなのです!」


「……マイルズよ、権三郎殿と同系機種の案山子をうってくれまいか」

 残念ながら権三郎は我が国の、いえ我が家の秘密(謎)の塊なので売れません。

 残念そうにするポチとは対照的にタマが漏らした言葉に何故だか皆さん頷いていました。


「晩御飯がグレードアップ確定です♪」

 

とある異世界宗教の7大幹部、その1人----

「エルルちゃん~、今日はここまででいいよ~、お兄さんも迎えに来てるしね~」

「は~い」

 儂は雇い主であるマナ殿。猫獣人の恰幅の良い……否、ふくよかなご婦人である。


「いつもエルルがお世話になっています」

「もう! お兄ちゃん。私はちゃんとお仕事してるよ!」

「本当に2人は仲好さんね~」

 夜の営業へ向けた仕込みが終わり一息ついていたほかの従業員も微笑ましい視線を我々に向ける。


「では、皆さん。お先に失礼します」

「「「「お疲れ様~」」」」

 こうして私は兄(部下)に手を引かれて店を出るのであった。


「……フィラント様。例の計画は……」

 部下は儂と同じく表と裏に携わる者である。

 表向き教主に恭順して居るが思考は儂と同じである。


「うむ。素材も順調に集まっておる」

「はい……」

「何暗い顔をしておる。人死にが出るわけでもないのだ」

「しかし、その後西大陸全域で戦乱が起きます。……私は大戦などもう2度と……」

 顔を伏せる部下。こういった態度は好感が持てる青年である。


「うむ。安心せよ。それも必要最低限になるよう、我らが動くのじゃ」

「……そう、……ですね……」

「プロジェクトクラーケン。まずは海運が経済の大動脈であるこの国、その首都でかつ物流の出発地点である王都横の大河にて混乱を起こす。これは布石じゃ」

 言い忘れたが、儂はほかの幹部向けに『聖竜』という肉体を提供した世界最高の錬金術師じゃ。獣王国よ。すまぬが我らの都合で少々混乱がある。許せ。これも我らが生き残るがため……。


「……混乱……」

 私は兄(部下)はそう呟くと顔を顰める。

 しかし、兄(部下)の口角が邪に吊り上がっていたことに、その時儂は……………………………………気付いていた。

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