第27話「変態王子はかく語れり」

 初めまして、私は変態王子と呼ばれる、仮面の紳士だ。

 皆さんは『真実の愛』というやつを知っているだろうか?

 え、知らない?残念だったな。ふふふ。

 ふっ失礼。持つものが持たないものを憐れむのは大人気なかったな。

 私もつい先日まで知らんかなったのだ。許せ。だが……、見つけたのだよ。


 そう、あれは晩秋の昼。私は自己の確立もなく、ただふらふらと世間に流されていた。

 そんな折、出会ってしまったのだ。運命にな……。

 初めて目が合ったとき、その『幼児には似つかわしくない知性の光と共に濁った』瞳をみて、私は落ちたのだ。

 超越者である父上と1度お話をしたことがある。


『人間大事に思うものは、至る、のではない、落ちる、のだ。お主もいつか見つけるとよいな』

 聞いた時は理解ができなかった。

 大事なものは自分で判断して掴まなければならない。当然のことだ。

 12王家の末席とはいえ生まれの責任を持つ私だ、政争の中で生きる運命にある。大事なものは進み、必死に掴んだ先にしか、自ら進む先にしか『ないではないか』と。

 父上とそんなお話しして5年が過ぎた。

 私は10を迎えこの世界での通例『巡りの儀』を迎えた。

 『巡りの儀』とは神に巡り合い恩恵を授かる大人へいたる第一段階の儀式だ。

 当時、父上の言葉も理解できず、私には周りが色あせた景色に見えていた。

 果たしてこんな世界に価値などあるのだろうか?


 『巡りの儀』で私は神に会った。神も暇ではない。神に会えるのは1万に1人いればよいほうだとか。

 出会った神は運命神だった。

 神は何も言ってくれなかった。

 ただただ寂しそうに私を見ていたのが印象的な神だった。


 『巡りの儀』を経て私はレベルとスキルを授かった。

 レベルは初めから50という事で『寵児』ともてはやされた。

 『王の御子はさすがだ』だと?私の苦労を。寝食惜しまず、いや虐待と言っていい環境で詰め込まれた成果を他人から賜ったものというのか?世界に対する興味がされに薄れた。


 さて我が国では齢10より高等教育を始める。

 10歳少し経った頃、遅ればせながら私も国の貴人候補どもが通う学校へと通うこととなった。私はここを卒業し、王選を経て、我が一族の悲願である王会議の一員となるはずだ。

 学校生活。相も変わらず私の人生には色がなかった。学校で学ぶことなどない。

 むしろ民草たちからのほうが学ぶことが多い。

 一時期料理に傾倒していたこともある。婚約者として『仲の良いことを演出』していた女にふるまったこともあった。食を通した笑顔とは良いものだ。私の人生に何か色が付きそうな気がした。


 だが結局婚約者と私の間には何も起こらなかった。

 結果、疎かにしてしまった政務で足元を掬われる形で罪人となった。

 私からレベルとスキルをはく奪するとき父上は『ここにはなかったのだな。外を見るとよい』と私にだけ聞こえる声で伝えてきた。

 ……というか、神から賜ったものを奪えるって父上は神なのだろうか?

 そして私は東から西の国へと放逐された。

 西の蛮族送りだ。我が国だけではないく、世界的にだが『先進に触れたければ東に行け』と言われている。

 我が国も西からの侵略が絶えない。

 そんな中、私は西の果てに流される。

 最蛮族は回避してくれたが、20年ほど前多くの国を巻き込んで大戦があった地域だ。……悪くないと思った。

 最速の黒龍で荷物の様に運ばれるのはまたとない機会だったので堪能した。

 だが、上空2百mからポイ捨てはないでのはないか?

 私でなければ死んでいるぞ。ん?ふつう死ぬ?たとえ水面であろうが、それだけら落下のエネルギーが付けば石に飛び込むのと変わらない?ふっ、その程度の事知らないとでも?……私も死を覚悟したが無事だった。


 どうやらレベルについて父上のご配慮があったのだろう。

 その程度の衝撃では死なぬ体だった。ただそれだけだ。

 そして私は出会った。出会って落ちたのだ。

 幼児だと?男だと?その様なものに何の意味がある!

 私は見つけたのだ。私だけの宝を。

 ということでお義父さんと呼んでもよろしいかな?

 ぬ、その手に持つのはドラゴンスレイヤー。

 ほほう、よろしい。真実の愛には試練がつきもの……いえ、ミリ殿のことではありません。

 ほう、さすが料理長。話が分かる。はっはっは。

 その日店を出ると同時に地面が爆発し、天高く吹き飛ばされた。

 着地すると驚愕の表情の幼児。愛いやつよ。愛でてやろう。

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