第706話ルクレツィア女史と祥子

ルクレツィアは、マスターと涼子の娘、一歳になったばかりの祥子が大のお気に入り。

カフェ・ルミエールに寄らなくても、マスターと涼子の家に寄り、祥子を抱っこする。


ルクレツィア

「ほんと、天使だねえ、この子を見ていると心が和む、癒される」

また、祥子もいつも笑顔でルクレツィアに抱かれる。


涼子も、それには笑ってしまう。

「祥子も、にこにこして、目をクリクリとして」

少しでも育児の気分転換になるのかもしれない、涼子もルクレツィアをお気に入り、本当に仲良しになっている。


ルクレツィアは、またイタリアやヨーロッパの玩具や服を寄るたびに持ってくる。

ブロック遊びのようなもの、天使のぬいぐるみ、服もかなりデザインや色彩感あふれる高級品。


マスターも涼子も、恐縮してしまうけれど、ルクレツィアは、持って来てしまう。

「私が、持って来て祥子ちゃんの笑顔が見たいの」

「お礼なんていりません、変な気は使わないで」

「ほんと、愛らしい、美人だねえ」


また、祥子にいろんなことを語り掛ける。

「祥子ちゃんの結婚式には呼んでね」

「いや、無理やりでも出席する」

「そうだ、ウェディングドレスは、私が作る」

「フィレンツェにも来てね、一緒に旅行しようよ」

そんなことを語り掛けて、祥子が笑おうものなら、途端にルクレツィアはウルウル、泣き出してしまう。


祥子が風邪とか熱を出そうものなら、もう大変。

ルクレツィアは、毎日、涼子に電話をかけ、祥子の様子を確認。

「祥子ちゃんは大丈夫?」

「逢いたいよーーー心配」


涼子は、笑ってしまう。

「大したことはないですから、治ったら連絡します」


ルクレツィアは、まだ、心配。

「史君が風邪引くと長引くので、すごく心配」


涼子は、また笑う。

「それは、史君が子供の頃から、弱すぎただけ」

「由紀ちゃんは、健康そのもの」

「たいてい、女の子のほうが強いから」


祥子の体調が回復すれば、また大騒ぎ。

「よかったーー心配したーー」

なんと言いながら、たくさんのお土産を持ち、祥子を抱きに来る。


マスターと涼子は、いろいろ思う。

マスター

「ほんと、人懐っこいなあ」

涼子

「はるばる本国を離れて、子供を抱けるって、うれしいいのかな」

マスターは思い出した。

「俺も、京都を出奔して、由紀ちゃんとか史君を抱っこすると、本当にうれしかったし、癒された」

涼子

「なんとなく、わかる、今でもすごく懐いているしね」

マスター

「祥子もそうなるかな」

涼子

「どうだろうねえ・・・」


祥子は、ルクレツィアの胸に顔を埋め、スヤスヤと眠っている。



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