第700話京都での新年会兼披露宴(11)

「シェリーに口づけ」は、大喝采の中、終わった。

そして次は、史のピアノ伴奏で、道彦がトランペットソロ。

これも、当初の打ち合わせと違う、シャンソンの名曲「聞かせてよ愛の言葉を」。

史の静かなジャズ風の伴奏で、道彦のロマンチックなトランペットが会場内に響き渡る。


大旦那は赤ワインを一口。

「ほーー・・・ジャズ風に・・・お洒落だなあ」

奥様は目がしらをおさえて、

「ジーンとするわねえ、道彦君の亜美さんを思う気持ちが、あふれている」

由紀も、感心している。

「史はジャズも上手い、大騒ぎのポップスが、しっとりと変化」

加奈子は、うっとり。

「二人とも上手すぎ、私もジャズヴァイオリンに挑戦するかな」

マスターは、うれしそうな顔。

「この二人はセンスが高い、この一族をやがて引っ張るのかな」

愛華は、ドキドキが止まらない。

「いつ、史君に告白したらいいの?チャンスがあらへん」

「どないしよ・・・今回はあきらめ?いやや・・・そんなの」

ただ、なかなか一対一になるチャンスも見いだせない。


史と道彦の演奏も終わり、披露宴での音楽の予定も全て終了。

その後は、再び歓談と食事。

道彦、亜美、それぞれの両親への花束贈呈などがあり、新年会兼披露宴も終了した。


さて、史は華蓮と、会場を出ながら、話し込んでいる。

華蓮

「都内に戻ったら、デートしない?」

「え?どこ?」

華蓮

「中華が食べたい」

「僕と華蓮ちゃんだけ?」

由紀と加奈子が、乱入してきた。

由紀

「私も行く」

加奈子

「京都でもいいけど?」

華蓮

「えーーー?史君とだけがいい」

「どっちでもいいや」

由紀

「美味しいものは、大勢で食べたほうがいい」

加奈子

「上品な料理が多かったから、ガツンとピリ辛の四川料理がいい」

華蓮

「仕方ないなあ、大人抜きにしよう、最低限」

由紀

「史はお子ちゃまだよ」

「姉貴抜きにしようよ、うるさいから」

加奈子

「そこで口喧嘩しない、まったく」

とにかく、ポンポンと話がはずむ。


愛華は、また、ためらう。

「うーー・・・入り込めん」

「こんなんじゃ、告白どころじゃない」

「あーーー!明日には史君、帰るんやろか・・・」

それでも愛華は先を歩く史たちを、必死に追う。


そして史に声をかける。


「史君!」

しかし、声は届かなかった。


史は、大旦那に手招きをされ、走り出している。






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