第681話カフェ・ルミエール楽団冬のコンサート(3)

演奏会のホールは、開場とともに、満員状態。

史の学園の生徒、音楽部、軽音楽部、合唱部はもとより、他の部活の生徒も多い。

また、学園長をはじめとして三輪担任他、多数の教師も姿を見せている。

そして史の推薦入学が内定している音楽大学の学長、内田先生、声楽の岡村先生、その他、プロの奏者、指揮者も数多く来ているようだ。

一緒に固まって、歓談をしている。

当然のように、音大生たちも、今日の演奏に興味があるようで、数多く座っている。

地域の聴衆も多い。

木村和菓子店の店主や、産直市メンバー、様々な人たちが席を占めている。

また、前回の演奏会と異なるのは、イタリア人が多いこと。

おそらくルクレツィア女史が、誘ったのだろう。

そのルクレツィアの周囲では、イタリア語が飛び交っている。


尚、カフェ・ルミエールは、本日は閉店。

マスターと清はカフェ・ルミエールビルの三階にレセプション会場を設定。

モニターに映る演奏会ホールの様子を見ながら、準備に余念がない。

また、カフェ・ルミエールのメンバーから、奈津美と美幸、華蓮が演奏会ホールに出向いている。


大旦那と奥様も顔を見せた。

里奈の家族や、道彦と亜美の、それぞれの両親も会場に入って来た。

晃や美智子、由紀も交えて、一緒に座ろうとするけれど、由紀は途中から逃げ出したい様子。


「史が心配で仕方ないの」


美智子は、首を横に振る。

「由紀は、余計なことを言うから、ここにいなさい」

「里奈ちゃんがいれば十分、奈津美ちゃんも美幸ちゃんも、華蓮ちゃんも付いているから、心配ない」

「かえって由紀が楽屋に行く方が、危険なの」


それを言われて、まさに落ち込む由紀になるけれど、父晃も、由紀をフォローしてくれない。

おまけに、奥様からも声がかかった。

「とにかく、ソリストは緊張状態なの」

「そっとしておいてあげてね」


奥様にまで言われてしまうと、由紀は動けない。

「・・・わかりました・・・」

「後は、史を信じるだけです」


そんな状態で開演ベルがなり、楽団員全員がステージに登場。

そして、指揮者榊原氏が、ゆっくりとステージに登場。

盛大な拍手を受けて、一礼。


一曲目の「ブラームスの大学祝典序曲」が始まった。

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